1月に米ハワイ州カウアイ島で米軍のイージス・アショア実験施設を視察後、「早期導入へ日米が連携していく」と語っていた小野寺防衛相 (c)朝日新聞社
1月に米ハワイ州カウアイ島で米軍のイージス・アショア実験施設を視察後、「早期導入へ日米が連携していく」と語っていた小野寺防衛相 (c)朝日新聞社

 ミサイル防衛システムの配備をめぐり、防衛省の地元対応がぼろぼろだ。話が漏れたら首相官邸に怒られないか。そんな「忖度」で自滅している。

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 増え続ける防衛予算をさらに押し上げる、陸上配備型の迎撃ミサイルシステム、イージス・アショア。

 北朝鮮の弾道ミサイルへの備えを強化するとして安倍内閣は昨年末に2基導入を決め、小野寺五典防衛相が5月に配備候補地を秋田、山口両県と表明。だが地元からは批判が相次ぐ。

 標的にならないのか、レーダーは住民生活に影響しないか、6月12日の米朝首脳会談で脅威は減ったのではないか──。

 こうしたもっともな疑念に拍車をかけているのが、防衛省の地元対応の拙劣さだ。

 配備に向け6月22日には小野寺氏自身が両県を訪れて理解を求めたが、その前日に防衛省が現地調査をする業者の入札を公告。住民感情を逆なでし、入札を遅らせるはめになった。

 根回し不足で地元に不満が広がり、防衛相訪問という切り札も火に油。7月には秋田県出身の菅義偉官房長官が秋田市での講演の中で「防衛省に誠意を持って対応するよう強く指示している」とまで語った。

「あり得ない事態だ」と頭を抱える防衛省幹部らは、こんな内情と反省を語る。

 自衛隊の活動や配備に地元で苦情が出ないよう、防衛省で対策を担うのはふつう「地方協力局」だ。全国8カ所の地方防衛局はじめ出先機関が地方議員などのキーパーソンをつかんでおり、連携して根回しする。

 ところが今回、防衛省で中心になったのは、最新鋭装備の導入に関わることは多いが根回しに慣れない「防衛政策局」。「当然話を入れておくべき県議に伝わっていない。根回しの段階で地方協力局に引き継ぐべきだった」とある幹部は言う。

 しかも、この防衛政策局が根回しを抱え込んだ理由について、省内では「話が漏れて報道されたら官邸に怒られるのが怖かった」という解説がまかり通る。

 安全保障に関する情報が慎重に扱われるべきなのはもちろんだ。だが、省内の他局に知られたら外に漏れると萎縮するのは行きすぎだろう。その結果、省内で必要な情報共有と役割分担がなされず、今回のような失態を招くのは本末転倒だ。

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