――では、西野さんにとって「孤独」とは何でしょうか。

 一人になって自分の判断や決断を究極に研ぎ澄ますための時間かもしれない。いろんな情報がある中で、ベストな判断を持ちたい、持てるんだ、この可能性が生きるんだという瞬間です。マイナスイメージではないんです。

――監督就任時の記者会見でも、「自分を研ぎ澄ます」と話していました。

 瞬間的にベストな判断を下すためには、自分を研ぎ澄ますことが重要。そしてその前段階で、コーチやスタッフから情報や選択肢を与えてもらい、選手やコーチとのコミュニケーションもとることが必要。私は、監督部屋を定めてもらうのも好きではない。みんなと同じ空間で、一緒に話をしています。そうして初めて、ベストな判断が生まれるんだと思います。

――7月いっぱいで日本代表監督を退任しました。監督に就任してからの4カ月を振り返るとどうでしょう?

 一日一日が非常に長かったですね。初めてのステージでの戦いでしたので。

――今はどのような心境ですか。

 虚脱感は確かにあります。だけど、サッカー界の最高峰を経験し、世界が広がりました。いままで見たことがない景色を見せてもらい、これからのサッカー界の基準がはっきりしたと思います。基準というのは、世界のスタンダードです。そのスタンダードを、W杯の日本代表監督を経験したことによって感じることができました。

――最後に、これからの目標について。指揮官として再びピッチに立つことはありますか。

 いつかまたピッチに立ちたいと思うかもしれないですね。ただ今は、これまでの経験を子どもたちに還元することでサッカー界に貢献していきたいと思っています。サッカーの楽しさだけでなく、サッカーの文化も、世界を目指していけるんだということも、伝えていきたい。そう考えています。

(編集部・野村昌二)

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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