武井壮(たけい・そう)/陸上競技・十種競技の元日本チャンピオン。野球、ボクシング、柔道など様々なスポーツにチャレンジし、地上最強の百獣の王を目指す。ツイッター、インスタグラムは@sosotakei(撮影/伊ケ崎忍)
武井壮(たけい・そう)/陸上競技・十種競技の元日本チャンピオン。野球、ボクシング、柔道など様々なスポーツにチャレンジし、地上最強の百獣の王を目指す。ツイッター、インスタグラムは@sosotakei(撮影/伊ケ崎忍)

“百獣の王”にして陸上競技・十種競技の元日本チャンピオン武井壮さんは、食事にもこだわりを持っているという。そのマイルールには、やはり“獣”に通じるものがあるようだ。

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「いくつか、人生の目標があるんです。日々、その目標に向けた体づくりをしています」

 目標のうちひとつは、世界マスターズ陸上で世界新記録を出すこと。武井さんはチームを組み、45歳クラスでの4×100メートルリレーで、地球史上最速で走れるかにチャレンジしようとしている。

 トレーニングは毎日行っているというから、さぞたくさん食べるだろうと思いきや、武井さんがしっかり食事を取るは、ハードワークの後だけと決めているという。

「動物はおなかが減ってから、狩りに行くでしょう。ぼくも同じで、体にエネルギーが残っている状態で、食事する必要はないと思っています」

 現代日本では移動は電車や車で、体力を消耗する機会が少ない。武井さんも十種競技の選手現役時代に比べ、体を使う機会が減った。

「1日3食も食べると、感覚的にキレがなくなり、脂肪も増える。食事の時間や回数は決めていません。必要な栄養を、必要な時に取るだけです」

 世の中では、さまざまな食事法が「体にいい」「ダイエットにいい」と現れては消えていく。そんな流行り廃りは「気にしないようにしている」。

 食に対する考え方のベースは、子ども時代にある。両親の離婚後、中学生のころから兄と二人暮らし。食事を作ってくれる人がおらず、お金もなかったから、腹いっぱい食べた記憶はあまりない。何を食べるべきか常に考え、必要な栄養についての知識を本で学んだ。

「必要な栄養を取ると、リカバリーが早いし、頭もすっきりするし、体が動くようになる。何より心地よい。自分の体の感覚を大切にしています」

 心地のよい食事は、人によって違う。活動や目標によって、食は変わるからだ。武井さんの食は、武井さんが「45年かけて築いてきたもの」だという。

 1日10時間ものハードトレーニングをしていた現役時代はエネルギー7千キロカロリー超の食事を取ることもあったが、体の動かし方が変わったから、食も自然に変わった。

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