芥川賞作家が被災地で書店オープン 創作活動に思いがけない影響も

小柳暁子,北條一浩AERA
 芥川賞作家・柳美里さんが被災地に書店を開いた。福島県南相馬市の旧警戒区域に移住しての書店運営は、無書店地域に暮らす人たちだけでなく、柳さん自身の創作活動にも影響を与えているという。

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 常磐自動車道を東京から北上すること約4時間。芥川賞作家の柳美里さん(50)が今年4月に開店した書店「フルハウス」は、福島県南相馬市のJR小高駅からほど近い場所にある。作家の角田光代さんらが選んだ本が格子状の棚に直筆メッセージとともに収まる。中央の平台には、力強い筆致でサインが書かれた柳さんの著書が置かれている。

 それまで鎌倉に住んでいた柳さんは東日本大震災後、被災地に通い始めた。臨時災害放送局で6年間パーソナリティーを務め、住民約600人に話を聞くなかで移住を決意。近隣の小高産業技術高校の生徒が電車待ちの時間を過ごせ、地域の人が気軽に立ち寄れる場所を作りたい。書店ならできるかもしれないと思った。

「でも実際は難しくて。朝礼から仕入れまでひと通り、書店で研修させていただきました」

 10坪の店舗、住民数は約2800人。開店資金の一部はクラウドファンディングで集めた。出版社から本を仕入れて書店に販売する出版取次会社との取引は無理だと思っていたが、日本出版販売(日販)の社員との出会いから道が開けた。

「もう駄目かなというときに驚くようなことが起こる。諦めないでやりなさいということなんじゃないかと思うんです」

 日販東北支店でフルハウスを担当する小林基(もとき)さん(38)は、「いわゆる売れ筋ではなく独自の本が売れています」と言う。実際、6月のベストセラーには『倉本美津留の超国語辞典』、『ナメクジの言い分』といった他店とはひと味違う本が並ぶ。国道6号沿いだと、小高からいわき市までは無書店地域。楢葉町や広野町からもお客さんが車で訪れる。

「避難先からご自宅への一時帰宅のあとに立ち寄られる方もいらっしゃいますね。まっすぐ戻るのはつらいと」(柳さん)

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