C:私も似た境遇です。先代住職は叔父が務めていたのですが、病に倒れて介護を手伝っていたところ、突然、白羽の矢を立てられて後を継ぐことになりました。4年ほど勉強してから住職に就いたのですが、当然その間、檀家の法事を受けることはできません。数年間のブランクで檀家は半分に減ってしまったので、私の最初の仕事は葬儀会社への営業でした。ところが、葬儀会社は「で、なんぼバックしてくれるの?」としか言わない。バックマージン次第で、おたくにも仕事をあげるよ、っていうことです。そんなのばかりで嫌になったので、イオンやAmazonの「お坊さん便」など、あらゆる仲介サービスに登録しました。どんなレビューを書かれようが、返品されようが構うもんかと(笑)。その積み重ねで、継いだ当初の10倍ぐらいのお布施収入を頂けるようにはなりましたね。

──仲介サービスを利用していることに対して周囲の反応は?

C:最初は京都の保守の先生方から猛批判を食らいました(笑)。私はすぐにホームページをつくって、葬儀や法事にかかるお布施の額も明示するようにしたんです。そうしたら、「おれらがボッタくっているように思われるから、すぐに消せ!」と。「AERA」はこれまでに「お墓はもういらない」とか「お寺はもういらない」といった特集をやっていますが、「お前も同じ考えなんか?」と詰められたこともありました……。

A:でも、もはや仲介サービスなしにはお寺の経営は成り立たなくなっています。間もなく、業界では仲介サービス経由の葬儀・法事の依頼が半数に達すると言われていますから。これは、檀家の上に業界全体が胡坐をかいてきたことに原因があると考えています。実は私の本山のほうは離檀者が相次いでいて、寺院の修繕費用もままならず、住職の自宅1階はゴミ屋敷のように廃れています……。それなのに、自宅にはブランドバッグが山積み状態。さすがに住職も危機感を覚えたのか、仲介サービスの利用を始めています。

C:まったく一緒です(笑)。最初は批判していたのに、「どうやって仲介サービスを利用しているのか教えてほしい」とこっそり聞いてくる住職が増えました。登録の仕方からホームページの作り方まで細かく教えるのですが、お布施料だけは絶対ホームページに記載しないんですよね。なぜなら、檀家からは仲介サービスでもらう倍以上のお布施をもらっているから。

B:お寺は本来、檀家のものです。それなのに、檀家からは高いお布施をふんだくろうなんて、本末転倒ですよね。だから、「安いお布施で数をこなすよりも、高いお布施を払ってくれる檀家を相手にするほうがいいぞ」なんて平気で言ってくる住職が少なくありません。

(構成/ジャーナリスト・田茂井治)

※AERA 2018年8月13-20日合併号より抜粋