写真=撮影・今祥雄
写真=撮影・今祥雄
墓じまいがスッキリわかるフローチャート(AERA 2018年8月13-20日合併号より)
墓じまいがスッキリわかるフローチャート(AERA 2018年8月13-20日合併号より)
【葬儀・お墓・終活 ソーシャルワーカー】吉川美津子さん/葬儀ビジネス研究所「アルック」代表取締役。All About「葬儀・葬式・お墓」ガイド。供養コンシェルジュ協会理事等。社会福祉士として福祉・介護分野でも活躍(写真:本人提供)
【葬儀・お墓・終活 ソーシャルワーカー】吉川美津子さん/葬儀ビジネス研究所「アルック」代表取締役。All About「葬儀・葬式・お墓」ガイド。供養コンシェルジュ協会理事等。社会福祉士として福祉・介護分野でも活躍(写真:本人提供)

 管理する人がいないなどの理由から、お墓をなくす“墓じまい”を選択する人がいる。お墓を更地にするだけなら、別に大変ではないのでは……というのは甘い考えで、実は数多くのプロセスが必要となる。その一部をご紹介する。

【図版】必要な段取りは?墓じまいがスッキリわかるフローチャートはこちら

「父方の祖父母が眠るお墓が神戸市の山の中にあるのですが、最後にお参りできたのは2年前。高齢化で墓参する人が減ったせいか、昔からあった近所の花屋も閉店してしまい、せっかく来たのに花すらお供えできなかったのが申し訳なくて……」

 と語るのは、関西出身ながら東京で30年近く生活する会社員のAさん(52)。Aさんのような東京在住の地方出身者にとって、「高齢になった両親が亡くなったら、故郷のお墓を誰が管理するのか?」は“今そこにある難題”である。

 少子高齢化、都市部への人口流入、先祖供養に対する意識の変化などを背景に、今ある墓を別の場所に移す「改葬」または散骨などによる「墓じまい」を迫られる人が増えている。いずれも、生身の人間の移動に比べ、「遺骨」を墓から取り出して別の場所で供養するまでの作業には驚くほどの手間やお金がかかる。改葬はまだしも、墓じまいは墓を更地に戻すだけでしょう、と思ったらこれが大間違い。

「墓じまいというと、田舎にある誰もお参りできないお墓をなくす手続きをしておしまい、と思われている方が多いようです。でも遺骨をそのまま放置しておくわけにはいきませんから、古い墓を撤去したら、その中にあった遺骨を必ずどこか別の場所に移さないといけません(散骨や永代供養も『移す』という考え方)。つまり新しい場所への遺骨の移動が完了して初めて、『墓じまい』といえるのです」

 と強調するのは、葬儀・お墓・終活ソーシャルワーカーの吉川美津子さん。ちなみに墓の中の遺骨を勝手に処分するのは犯罪だ。刑法190条の遺骨遺棄罪に問われると、懲役3年以下の刑に処される可能性すらある。

「墓地埋葬法ができた1948(昭和23)年以前に建てられたお墓は、村単位で管理していたり、田んぼや畑の中にあったりして、土地の権利関係も非常に複雑です。今から70年以上前というと、地方によっては土葬も多かった時代。現在は火葬して焼いた骨、つまり焼骨しか受け付けてくれません。もし墓じまいしようと思っているお墓から、土葬されたと思われる先祖の遺骨が出てきた場合は、そのご遺体の分も、自治体から火葬許可証をもらって、火葬場で骨をもう一度焼く手間も必要になります」

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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