ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 連日記録的猛暑が日本列島を襲っております。先日の西日本豪雨の被災地も同様で、ダブルパンチとでもいうべき状況で、改めてお見舞い申し上げます。

 ところで、果たして猛暑とGDPの直接的な関連は如何に、が今回のテーマであります。結論から言いますと、過去の猛暑が夏のGDPを直接的に持ち上げたという例は意外に多くありません。メディア的には、

<猛暑/飲料、エアコン販売急増…家計消費を押し上げ(毎日新聞電子版)>

 などと景気の良いことになる。確かにGDPの60%を占めるのは個人消費なんですが、猛暑で所得が増えるわけではないので、エアコン、ビールなどがガンガン売れてもその分ほかの消費を絞る傾向が強い(特にここ数年)。

 暑すぎてエアコンに使うお金が増えればそれはGDPがプラスになりますが、一方で外出しませんからそれ以外の消費は増えない。ビールも涼しいところで飲むので、その分ビアガーデンなど屋外でがんがん飲むことが減る。ですからトータルで見ると「行って来い」になり、あまり影響が出ないという説もあるのです。

 一方、日本では経済状態が「景気」と呼ばれるだけあって、「気」という奴にしばしば左右されます。古くは昭和天皇が逝去される前の1988年秋から起きた「自粛」という名の消費停滞。2011年の東日本大震災時もまさにこれ。実際私は東北にいたわけですが、自粛なんてせずにがんがん東北に来てお金を使ってもらったほうがよっぽどありがたいんですが、多くの温泉旅行がキャンセルに……。一人使いまくっていた私は「怪しからん! 不謹慎だ!」などと陰口をたたかれる始末。

 今年も西日本の災害で自粛ムードがあるのに加えて、気象庁が「命を守る行動を!」なんて言い出してしまうので、更に自粛ムードが高まりそうな気配ムンムン。

 もちろんそれ自体は非難されることでは全くない。暑い夏をエアコンだけで乗り切ろうなんていう「エネルギーテロリスト」のようなことを考えるより、住宅をきちんと断熱するエコハウスを充実させようと考えれば、新たな投資機会が生まれるはずです。

 日本にはこのような重要な問題が山積しており、話がこっちに来れば猛暑が引き込んだ新ビジネス、という話になる。ですがどうも自粛ムードに引きずられてしまう。自分一人だけで行動して文句を言われるのが日本人は本当に苦手なようです。

 こういう時は被災地のためにも大いにお金を使いましょう。ご家族で涼しい東北に行かれるもよし(東京39度の日に八戸は21度、むしろこれではやませが心配に……)、マツダスタジアムでビールを飲むのもよし、であります。

AERA 2018年8月6日号

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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