20年の東京五輪・パラリンピックが2年後に迫る中、こうした機運はますます高まっていくと予想される。従来の成熟したスポーツを始めるのは無理でも、自分が楽しめる身体活動を自由に選び、好きな時間に好きなだけするというスポーツのあり方が加速する可能性はある。パデルのような新感覚のスポーツを先駆者的に楽しむ人が増えている素地もそこにある。

 プレミアムフライデーとなった6月29日、さいたま市の大型複合商業施設コクーンシティで、「ビリッカー」の体験会が開かれた。大きくしたビリヤード台の上で、サッカーボールによく似た球を蹴ってビリヤードを楽しむフランス発祥のスポーツだ。日本ビリッカー協会の鈴木俊和さん(29)によると、日本に導入された15年6月からこれまでに延べ1万人が経験したという。懇親会や歓迎会などの企業イベントでも引き合いがあり、これまでに50社以上でビリッカーを開催した。

「普段運動できない人のためになればと活動しているが、ここまで急速に普及するとは思わなかった。インスタ映えもするし、レア感もある。蹴ることができればいいので敷居も低い。人と人のコミュニケーションにもいいし、おしゃれで気軽なスポーツだと思う」(鈴木さん)

 パデルやビリッカーのような新感覚の競技は、スポーツを楽しむ風潮が強い海外の発祥が多い。既存のスポーツを改造したり、融合させたりして新競技を生み出し、SNSなどを通じて競技人口を増やしていく。その王道が、東京五輪から新競技に採用されるまでになったスケートボードやスポーツクライミング、サーフィンだ。

 今、日本でも注目すべき動きが出ている。「未来の運動会」と呼ばれる企画で、参加者たちが最初の数日間、何をしたいのかを話し合い、最終日にそれを行うという究極の参加型・体験イベントだ。8月10日から3日間、東京・渋谷で開催される。これまでに山口市や大阪市などで10回以上開催され、参加者らが独自に考えたVRやドローン、レーザービームといったテクノロジーと掛け合わせた競技などが行われた。

 既存スポーツの概念にとらわれない自由な発想でやりたいことを自分たちで決め、大勢で楽しむ。まさにスポーツ新時代の要素を全て取り込んだ先駆的、象徴的な取り組みといえ、「これは新しい動きだと注目しています」と前出の笹川スポーツ財団の吉田さんも感心する。

「一緒に体を動かしたい、動かし方も自分たちで決めるのなら行ってみたいという人が増えているのでしょう。結果的にSDGsが目指すスポーツを通じたコミュニティーづくりになっているのが、とても興味深い」

(編集部・山本大輔)

AERA 2018年8月6日号