きっかけは15年、地元の建設会社でマリメッコとライセンス契約を結んでいる「都田(みやこだ)建設」から、沿線にある無人の「都田駅」をリノベーションしてカフェを開設したいとの申し出があった。実際におしゃれに変身。それを見た植田社長が、今度は都田建設サイドに「車両を1両、マリメッコで装飾してくれないか」と持ち掛けたのだ。

「豪華列車が有名になったころでしたが、うちにはとてもそんなお金がない。なので、リノベーションされた駅を見て、列車でもやってくれないかと思ったのです」(植田社長)

 都田建設はマリメッコをPRでき、天浜線はお客を呼べる──。ウィンウィンの関係を築くことができると考えたという。こうして15年10月、1両のみ現存する「TH3000形」を「スローライフトレイン」に模様替えして運行を開始。利用は好調だ。女性誌にも取り上げられるようになり、遠方からも列車に乗るためにお客が訪れる。

 実は、天浜線は11年8月、運営していた天竜川の川下りで船が転覆し5人が死亡した。川下り船は廃止となり、鉄道も廃線にすべきという声も上がった。植田社長はそんな状況下に社長に就任した。力を込めて語る。

「鉄道が元気なら地域が元気になって、地域が元気になれば鉄道はさらに元気になる。地域のためにも、絶対にうちの鉄道はつぶしたらいかんと思ってます」

AERA 2018年7月30日号