中でも最も揉め事の種になりがちなのが、相続だ。たとえば、離婚や死別で独り身になった親が財産を残して亡くなれば、すべて子どもが相続することになる。ところが親が再婚してしまうと、その半分は新しい配偶者の相続分になってしまう。親のお金を当てにしていた子どもにとっては、死活問題に発展しかねない。

「必ずしも反対する子どもばかりではなく、個別の事情や関わる人の性格によっても反応は異なるのが難しいところです。たとえば、高齢の親が独り身では子どもも心配なので、子どものほうから再婚を勧めたり、良い関係を築くケースも多くあります。あるいは、交際は認めても財産を守るために結婚は認めず、『いいとこ取り』をしようとする子どももいます」(露木さん)

 こうした子どもの気持ちに配慮して、婚姻届は出さずに事実婚の形をとる中高年カップルも多いという。事実婚のパートナーには遺産の法定相続分はないが、健康保険の扶養に入ったり、死別した際に遺族年金を受けられたりすることもあり、子どもの権利を奪うことなくメリットを得られる可能性もある。また、夫と死別して遺族年金を受給している女性の場合は、再婚すると受給資格を失うため、交際にとどめておこうとする人も多いという。(ライター・森田悦子)

AERA 2018年7月30日号より抜粋