手をつなげば、ときめく。何げない会話を愛しく感じる。パートナーがいる暮らしは、「今までになく心が満たされている」。

 人生100年時代、大人の恋愛が活気づいている。早稲田大学教授で恋愛学に詳しい森川友義さんは、「当然」と指摘する。

「1997年の厚生白書が『高齢者も恋愛や性に無縁ではない』と宣言したとおり、恋愛感情は人間の本能です。結婚したから、恋愛感情を抱かなくなるわけではない。現に男性の74%、女性の29.6%は人生に一度は不倫をします。いくつになっても恋愛するし、結婚もします」

 AERAが40代以上を対象に実施したアンケートでは、恋愛中の人が約20%を占め、うち不倫という人が36.7%に上る。

50歳以上の男女の結婚、「熟年婚」も増加傾向にある。

「60年には熟年婚は8839人、当時の全婚姻数の0.5%でしたが、2015年には4万485人に達し、全婚姻数の3.2%を占めます」(森川さん)

 ノリコさんの例は、熟年ゆえに深い関係を築けた理想的なケースだろう。結婚して1千日、喧嘩したことはない。「家事はできる人がやればいい」。家にいる夫がゴミを出し、洗濯物を干し、食事をノリコさんが作る。

「20代、30代の結婚生活は、仕事に子育てと忙しく、苦しいことも多いでしょう。大人になってからは楽ちん。純粋に二人の時間を楽しめます」(ノリコさん)

 一緒に過ごせるのはあと30年、元気でいられるのは10年かもしれない。いずれ親やお互いの介護に直面するだろう。

「残された時間をどう楽しむかが常に頭にあるの。つらいことに向き合うなら、一人より二人がいい。理解してくれる人がいれば、無理せず頑張れます」(同)

(編集部・澤志保)

AERA 2018年7月30日号より抜粋