「ボランティアの少ない平日に被災者を助けたい」。夜勤前の人、友人とともに来た学生。多くの思いやりが被災地にはあった(撮影/山本大輔)
「ボランティアの少ない平日に被災者を助けたい」。夜勤前の人、友人とともに来た学生。多くの思いやりが被災地にはあった(撮影/山本大輔)
保険の加入手続きや支援活動中の注意点の説明を受けてから作業に入る。北海道や九州など全国からボランティアが来ている(撮影/山本大輔)
保険の加入手続きや支援活動中の注意点の説明を受けてから作業に入る。北海道や九州など全国からボランティアが来ている(撮影/山本大輔)

 西日本豪雨災害の被災地で始まった復旧作業は、長期化する見通しだ。広島県坂町の被災地にボランティアで入ると、深刻な現状がよく見えた。

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 腐った水のような刺激臭が、防塵マスクを通り抜けてツーンと鼻を刺した。

 気温36度の酷暑のなか、総頭川の氾濫がもたらした大量の土砂や汚泥をスコップで取り除く作業は、やってもやってもきりがなく、体力ばかり奪われていく。体中に汗が噴き出し、作業服はまるで雨にでも降られたかのようにびしょびしょだ。防塵ゴーグルは汗で滑り落ち、粉塵が容赦なく目に入る。防塵マスクもしているのに、目や口の中がざらざらしてくる。ねずみ色の軍手は真っ黒になり、帽子から長靴まで体全体が泥や粉塵まみれになっていた。

 災害発生から約2週間たった7月19日、西日本豪雨災害で甚大な被害を受けた広島県坂町にボランティアとして入った。坂町のボランティア拠点「災害たすけあいセンター」によると、この日集まったボランティアは計138人。海の日の3連休には1日約700人が来たが、平日になって数が激減した。この町だけで16人の死者を出した豪雨災害の被害状況は深刻で、この日もまだ安否不明者の捜索が続いていた。復旧作業もようやく始まったばかりだ。

 広島市と呉市の間にある坂町は、海岸線近くまで迫った山のあちこちで、大小さまざまな規模の土砂崩れが起き、茶色い山肌をあらわにしていた。崩れ落ちた土砂が、谷を流れる総頭川になだれ込み、流木などで流れがせき止められ、周辺の集落に水が流れ込んだ。豪雨と土砂崩れと洪水が一気に起きたような災害だったという。

 センターの指示に従い、15人のチームに入れられた。ほとんどが地元や周辺から来た人たちだ。活動場所として連れていかれたのは上条地区。総頭川の氾濫で1階が水没状態となった木造2階建て住宅から土砂などをかき出す作業だった。10分作業したら10分必ず休憩する──。事前に説明された時には、「そんなスローペースでは進まない」と違和感を覚えた。炎天下で実際にスコップを持ってみると、わずか10分の作業でも、頭がくらくらして、呼吸困難に陥りそうな過酷さだった。

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