竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
トップの覚悟に触れたW杯ロシア大会(※写真はイメージ)
トップの覚悟に触れたW杯ロシア大会(※写真はイメージ)

「コンビニ百里の道をゆく」は、48歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会が終わりました。私も日本代表の活躍に、本当に胸が熱くなりました。個々の選手たちが自らの最高のパフォーマンスを発揮し、その力が集まって強い組織力となり、強豪国と互角に戦った。そのプレーに興奮、感動したことはもちろん、西野朗監督の数々の「決断」にもドラマを感じました。

 賛否両論あったポーランド戦での最後の「パス回し」ですが、「最悪の場合を想定し、それを回避するための決断」としては適切だったと思います。どこまでならリスクを引き受け、グループリーグ敗退という「最悪の結果」を回避できるか、西野監督は試合前に他試合の状況も含め、さまざまなシミュレーションをしていたはず。最後の十数分、「点を取りにいくリスク」と「セネガルが点を取るリスク」を勘案し、「追加失点しないこと」を選択しました。

 試合後、キャプテンの長谷部誠選手が言っていたように、見ている側にとっては、もどかしいものだったかもしれません。ただ、選手たちは監督の決断を信じて、迷いなくボールを回していました。それは、監督と選手の信頼関係があってこそです。

 もう一つ、1998年のW杯フランス大会で当時の岡田武史監督が下した「決断」も忘れられません。最後の代表選考で三浦知良(カズ)選手を外した、あの歴史的な決断です。カズといえば高校時代に単身でブラジルに渡って活躍し、Jリーグの発展にも寄与したスター選手です(私はブラジルへ渡るというカズの決断にも当時感動したことを覚えています)。カズを外す決断には日本中から非難の声が上がり、W杯本選は全敗で、さらに批判を浴びました。でも、一切言い訳をしなかった。熟慮を重ね、決断したことの責任は全て負う。岡田監督の強い強い決意を感じました。

 大きな決断の背景には、トップの孤独と苦悩があります。選手の活躍だけでなく、監督の「覚悟」もひしひしと感じることができたW杯でした。

AERA 2018年7月30日号

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竹増貞信

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竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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