ランキングはあくまでも参考指標。「結婚したい人気企業ランキング」もあるが、ランキングがなくなる日がくるかも(撮影/写真部・小原雄輝)
ランキングはあくまでも参考指標。「結婚したい人気企業ランキング」もあるが、ランキングがなくなる日がくるかも(撮影/写真部・小原雄輝)
超上位校では盤石の人気(AERA 2018年7月23日号より)
超上位校では盤石の人気(AERA 2018年7月23日号より)

 東大・京大生の就職先として、「外コン」とよばれる外資系コンサルティングや、「外銀」こと外資系投資銀行が人気だ。2018年卒の東大・京大生が選んだ就職先トップ3は「外コン」と「外銀」が占めた。一方で順位を落としているのが、総合商社。しかしそんな中、自身の働き方を考え、総合商社を選ぶ学生もいる。

【図表で見る】超上位校で人気の企業はこちら

 人生と仕事はイコールだ。何のために働くのか、この根本的な問いと向き合った時、総合商社に魅せられる学生も多い。

 東大経済学部3年の男子学生(22)は、人生を振り返った時に誇りを持った仕事をしていたいと考えている。「誇り」とは、日本に貢献すること。その意味で、働いた利益が海外に吸い上げられる外資には働く意義を見いだせない。第1志望は外交官だが、一般企業であれば総合商社に共感すると語る。

「総合商社は日本を支えているという意味で関心があります。たとえば鉱山資源や食物も、総合商社が契約を取ってこなければ枯渇してしまう。商社に入ったら、何らかの形で日本に貢献したいと思います」

 総合商社から内定をもらった早大商学部4年の男子学生(22)は、就活に当たり「外コン」「外銀」だけでなく「外資メーカー」も選択肢に入れて考慮した。が、(1)ビジネスの仕組み作り(2)海外勤務の可能性──この2軸で比較すると、外資は当てはまらなかったという。

「人と機能を武器に事業展開する総合商社は、その時々の時代のニーズに合わせて姿形を変える必要があります。現段階で注力している事業投資において後世に残すような仕組みをつくりたいと思ったこと、また時代に合わせて新しいビジネスをつくり上げていかなければならない基盤にも引かれました」

 一方、東大・京大生の総合商社離れを当の総合商社の採用担当者たちはどう見ているのか。「外資就活ドットコム」を運営するハウテレビジョンが出した「東大・京大生の志望企業ランキング」では、5大商社は低迷する。ランキングを見て一喜一憂しているのかと思いきや、

「低いよりは高いほうがいいという程度です」「結果として出てくるランキングはしょうがないです」

 などと達観の境地。人気企業ランキングは、学生が企業を選ぶ上での一つの指標に過ぎない。就活支援会社リーディングマークの社長、飯田悠司さんは言う。

「今後、社会が複雑化する中、仕事はより多様化し特定の分野に強い学生が求められるようになります。そうなると、東大とか京大とか超上位校とか学歴の意味もなくなってくる。人気ランキングという概念自体に意味がなくなり、ランキングがなくなる時代がくる可能性もあると思います」

(編集部・野村昌二)

AERA 2018年7月23日号より抜粋

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら