「一般の方々から見れば、刑の執行も今更の感があるかもしれませんが、以前オウムに居た者やアレフの拡大を心配する人からすれば、これはオウムの清算の第一歩です。アレフの教材は麻原個人の著作物で、麻原の子供の中には使用継続を差し止めようしている人もいる。そういう方向で相続が確定すれば、アレフにも大きな影響が出ます。そのためにもマスコミが関心を持ち続けてほしいと感じます」

 一方、坂本堤弁護士一家殺害事件などオウム真理教を追い続けてきたジャーナリストの江川紹子さんは、死刑執行により「アレフ」にどう変化が生じると見ているのだろうか。

「麻原の墓所をどうするのか、遺骨についてもあたかも仏舎利(釈尊の遺骨)であるかのように扱われ、教団の資金稼ぎの材料にならないか、注視していく必要はあります」

 ただ、江川氏は報復テロなどのリスクについては懐疑的だ。

「組織的な報復テロを警戒するのは現実的ではない、と思います。仮にテロを実施すれば、破壊活動防止法(破防法)適用など破滅的な形にしか向かわないことを、彼らも理解しているはずです。ただ、一部のはね上がり者がいないとは限りません。当局がしっかり監視していくことは必要だと思います」

 オウム事件当時、共同通信社会部で警視庁公安部担当記者だったジャーナリストの青木理氏は事件をこう総括する。

「宗教団体を公安が調べるのはタブーであり、それが戦後民主主義の一つのいい点でもあったが、あの事件で完全に決壊した。破防法を適用しようという動きもあり、その後盗聴法や団体規制法ができ、オウムとは直接関係のない国旗国歌法や周辺事態法など国家権力を強化する動きが急加速した。一方で再発防止につながるような真相解明はなされず、戦後最大級の事件の首謀者の裁判を『裁判ができる状態ではない』という理由で一審だけで終わらせた。詐病でなければ心神喪失状態であり刑の執行停止をしないと刑事訴訟法違反になる。本当はどうだったのか、そういう意味で乱暴かつ不透明で適正とは言い難い」

 そう。彼らオウム真理教が未曽有の凶悪犯罪をなぜ引き起こしたのか、実は何ら解明されていない。それを最も語れる人間が沈黙したまま、国家はタイプアップの笛を吹いたのである。(編集部・大平誠、小柳暁子、渡辺豪)

AERA 2018年7月16日号