「9.11(同時多発テロ)後の米国社会を鏡のように見ればいい。日本社会もまったく同じです」

 犯罪を計画段階から処罰できるようにする「共謀罪」の趣旨を含む改正組織的犯罪処罰法が17年に成立するなど、治安当局が後押しする法案が安倍政権下で次々に成立した。20年の東京オリンピック・パラリンピックを前に「テロ対策が大事だ」と訴える政府に、世論の抵抗は廃案を迫るほどには膨らまなかった。

 かつてオウム真理教の大幹部としてスポークスマンの役割を果たし、後継団体「アレフ」代表になるが、「脱麻原」を掲げて脱会、07年に「ひかりの輪」を設立した上祐史浩代表は、麻原らの死刑執行はオウムの清算にとって大きな節目になると受け止めた。「ひかりの輪」は「サリン事件等共助基金」「オウム真理教犯罪被害者支援機構」と09年7月6日、賠償契約を締結して合意書を交わしている。上祐氏は法務省の死刑執行発表を受け、東京地方裁判所内にある司法記者クラブで会見を行い、こう述べた。

「本日はくしくも私どもが被害者団体との間で被害者賠償契約を締結した日から、ちょうど9年目の節目の日でもあります。この日に執行されたことの重みもかみしめ、アレフの拡大抑止などの事件再発防止に努めていきたいと思います」

 上祐氏によれば、「アレフ」はいまだ麻原を絶対と妄信し、オウムが起こした一連の事件についても陰謀説を唱えて新しい信者の勧誘を続けているという。会見を終えた上祐氏に改めて感慨などを聞いてみた。

「アレフは事件も認めず、麻原が死ぬことも認めず救世主として帰ってくると言い続けていた。それが私が脱会した一つの理由で、その後11年間、離反した裏切り者の立場で精神的に闘ってきた緊張感がありました。刑の執行でようやく、当然の真実が証明された。麻原が復活すると信じなければならないという洗脳から覚める人も出ると思います」

 安堵(あんど)した表情でこう語った上祐氏は、こう続けた。

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一方、ジャーナリストの江川紹子さんは…