面倒見のよい一方で、最近の流行である、古典落語に現代の言葉やギャグを入れる姿勢には疑問も呈していた。若いうちは言葉尻に「ね」や「な」をつけてはいけない、「吉原がありましてね」ではお客さんに信用されなくなる――など、芸については厳しい人でもあった。
「『芸は人なり』という言葉があります。噺家ばかりじゃなく、歌舞伎や歌の席でもそうでしょうが、芸の中にその人自身が出てきてしまうんです。人情味のある人間は、人情味のある芸ができる。逆に薄情な人間には、薄情な芸しかできません。だから、常日頃から、自分で自分をきちんと育てないといけないんです」(『座布団一枚! 桂歌丸のわが落語人生』から)
寄せられた追悼のなかで多くの人が「歌丸師匠に会えたのが宝物」「かけてもらった言葉が宝物」とのべている。
芸は人なり。
そして歌丸さんの人柄もまた、多くの人にとってかけがえのないものだった。(ライター・矢内裕子)
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