どんな商品に投資しているのか。つみたてNISAでは、手数料が低水準で長期・積み立て・分散投資に適しているなどの基準を元に、金融庁が148本(6月22日現在)の投資信託を対象商品に定めている。SBI証券の残高ランキング1位はレオス・キャピタルワークスの「ひふみプラス」だ。制度スタート当初から不動のナンバーワンの座をキープしているという。

「成長期待が高い日本の中小型株を中心に高い運用成果を上げていることに加え、メディアで頻繁に紹介されていることでブランド化しています。全国でセミナーを開催したり、毎月動画で運用報告会を公開したりする姿勢も評価され根強いファンが多い」(SBI証券・橋本さん)

 ただ、モーニングスターの朝倉さんは、「ひふみはこれからが正念場」と話す。

「あまりの人気で、運用資産の規模が大きくなりすぎてしまった。時価総額が小さい銘柄に投資をすると自ら株価をつり上げてしまう結果になりかねず、機動的な投資が難しくなっている面があります。こうした対策もあってか、最近は米国株も組み入れるようになっています」

 この「ひふみプラス」は、ファンドマネジャーが裁量で運用していく「アクティブファンド」だが、つみたてNISA口座全体としては、圧倒的に「インデックスファンド」が人気だという。インデックスファンドは、日経平均株価やNYダウ平均株価など、特定の指数の値動きに機械的に連動する投資信託で、人の裁量が不要な分、運用にかかる手数料(信託報酬)が安いのが特長だ。

「連動する指数が同じなら運用成績もほぼ同じなので、投資家は信託報酬をシビアに比較して安いものを選ぶ傾向がみられます。『eMAXIS Slim』シリーズは、同じ種類のファンドの中でコストが常に最安になるよう設定されているところが人気を呼んでいるようです」(橋本さん)

「投資の成果は市場の値動きに左右されますが、コストは自分で確実にコントロールできる要素です。人が運用するアクティブファンドでも運用成績でインデックスに負ける例も多く、割り切ってコストの安いインデックスを選ぶという傾向は若い層ほど強くなっているようです」(朝倉さん)

 人気の商品は、日本株、米国を中心とする先進国株、中国などの新興国株、あるいはそれらを組み合わせて投資するバランスファンドが多い。朝倉さんは、ランキングの中に日本株が意外と少ないと指摘する。

「ホームバイアスといって、個人投資家は外国よりも自国の資産に投資したがる傾向がありますが、日本の若い投資家はドライな判断をしているようです。少子高齢化で経済が縮小していく日本より、右肩上がりを続けている米国株や、長期的な成長が期待できる新興国株を選ぶ人が多いようで、この姿勢は正解だと思います」

 初心者であっても、コストに厳しく、より成長期待が高い海外へ大胆に資産を振り向ける賢い投資家像がみてとれる。(ライター・森田悦子)

AERA 7月9日号より抜粋