非課税で投資ができる三つのNISA(AERA 2018年7月9日号より)
非課税で投資ができる三つのNISA(AERA 2018年7月9日号より)
年齢構成(AERA 2018年7月9日号より)
年齢構成(AERA 2018年7月9日号より)
つみたてNISA残高ランキング【1】(AERA 2018年7月9日号より)
つみたてNISA残高ランキング【1】(AERA 2018年7月9日号より)
つみたてNISA残高ランキング【2】(AERA 2018年7月9日号より)
つみたてNISA残高ランキング【2】(AERA 2018年7月9日号より)

 資産形成のため、つみたてNISAを始める若い世代が増えているようだ。今人気の投資先や、若手投資家に見られる傾向とは。

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「投資なんて無縁だと思っていたけど、老後も心配になってきたのでつみたてNISAを始めました。今のところは2.7%、4500円ほどの利益。5カ月間の成果と思えば上出来かな」

 と話すのは、会社員のAさん(43)だ。つみたてNISAを紹介する雑誌記事を読んで、1月から毎月3万3千円を投資信託に積み立てている。

「失敗したらお金が減るというのでかなり勇気が必要だったし、『ネット証券はなんとなく怖いから』と郵便局に行ったら友人に笑われたけど、やってみると意外と大丈夫。興味を持ってニュースを見るようになったし、株価がこれだけ動くなら自分の資産が変動するのも当然と思うようになりました」

 つみたてNISAは、まとまった資金を持たない若年層の資産形成を促すことを目的に2018年1月にスタートした制度だ。本来、投資の利益には約20%課税されるが、このしくみを利用すれば年間40万円まで、最長20年間にわたって非課税で投資ができる。

 投資信託評価会社モーニングスター代表で、個人投資家の動向に詳しい朝倉智也さんは、スタートから半年経過したつみたてNISAをこう評価する。

「つみたてNISAを機に高齢者から若年層へ個人投資家の裾野が広がっています。弊社で開催する投資セミナーの参加者も以前は9割以上が年配の男性でしたが、昨年後半ごろからは若い世代が明らかに増えてきて、女性比率は3割を超えました」

 ネット証券最大手のSBI証券でも、つみたてNISAによる新規顧客獲得効果が顕著に出ている。

「当社でつみたてNISA口座を開設した人の77.3%が、初めてのお客様です。他の金融機関で取引していた人も含まれるでしょうが、おそらくほとんどが『投資デビュー』の方だと考えています」(SBI証券・橋本隆吾投信・債券部長)

 年齢分布を見ても、30代以下は同社の顧客全体では31.6%だが、つみたてNISA口座に限ると55.1%を占める。ネット証券であるためもともと高齢者は少なく、60代以上の割合は全体で20.4%だが、つみたてNISA口座になるとわずか3%で、やはりつみたてNISAが現役世代の資産形成に活用されていることがわかる。

「地銀でも、職場単位でつみたてNISAへの加入を積極的に営業したところは、口座数を伸ばしたようです」(朝倉さん)

 現役世代の資産形成を支援するという金融庁の狙い通りの好スタートといえるが、朝倉さんはこの背景を「投資を始めやすい環境にあったことも大きい」と分析する。

「人が行動を起こすには、やってみたいと思わせるポジティブな理由と、やらなければまずいと危機感を煽るネガティブな理由の両方が必要ですが、ここ数年は両方がそろっていました」

 まず、日米など世界の株式市場が堅調な環境になっているというのがポジティブな側面だ。そして、若い層を中心に老後の年金や将来に対する不安が蔓延し、日銀のマイナス金利政策で預貯金の金利がほとんどない状況が続いていることも、現役世代の投資を後押ししたという。

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