池松:本当にその通りだと思います。ただ、男3人がおじいちゃんを見守るという企画は通らない。誰も見たくないし共感もない。でも、人を思うことに対しての「身に覚え」はある。だからこそ、恋愛に対するアプローチは人それぞれだけど、ハッとさせられることがあるから演じてみようかなと思えました。

満島:3人は自分の名前を捨て、隠す。つまり、匿名で生きるということですが、それはSNSと変わらない。人はその時にしか本音を言えないのかもしれない。じゃあ実際に相手と面と向かったときにまっすぐ目を見ることができるのか、責任を持って言葉を伝えられるか。この映画の心って、人間関係の根底にあるものを描いているんじゃないかな。例えば、「アラサー女子」という言葉。人を惹きつけやすくわかりやすい言葉だけど、こうした名前をつけることによって、イメージだけで作り上げてしまう世界は危ういことなんじゃないか。言葉とイメージが独り歩きしちゃうことはとても危険なこと。そこが松居さんが描きたかった本質なのではないかな。

――初共演の2人は互いに学ぶことがあったという。

池松:テンションをアップする方法は、僕もテクニックとしては持っているんですけど、普段こんな調子なので長い時間がかかるんですよ。今回、高い跳び箱を跳ぶ時に満島さんを見てたら意外に跳べちゃった、というところがありました。本当に助かりました。

満島:僕は大先輩との共演が多く、ほとんど僕が一番年下。だから逆に、自分がその時出せるものを全部出すということをやってきたのかもしれない。それを経て今回池松くんと共演できた、というのがうれしかった。最初の出会いが役者としてではなくフットサルですから。この違いがむちゃくちゃ面白いんですよ。

池松:ふふふ。

満島:ほら、ここで「ふふふ」とか言ってくれるじゃないですか。これがいいんですよ。「うるさいから黙って!」ではなくて。

池松:僕はどんどんしゃべってほしいよ(笑)。

満島:すると僕がまた気持ち良くなっちゃってしゃべっちゃう。学ぶことは毎日あります。

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