AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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■いま観るシネマ
遺伝子の疾患で顔に特徴を持って生まれた10歳の少年オギー。彼が世界と向き合っていく様を、お涙頂戴ではなく生き生きとユニークな成長ドラマに仕立てたスティーヴン・チョボスキー監督。原作に惚れ込んだという。
「原作者のR・J・パラシオがこの物語を書いた動機がある。彼女はアイスクリーム屋で、実際に顔に特徴を持つ子に出会ったんだ。そのとき彼女の幼い息子がおびえて泣き出してしまった。その子の母親は静かに『行きましょうか』と言って立ち去ったけれど、パラシオは『あのとき、どうすればよかったんだろう』と後悔し、物語にしたんだ」
オギー役のジェイコブ・トレンブレイは映画「ルーム」で注目された俳優だ。やはり原作の大ファンだったと話す。
「僕もママも原作を読んで何度も泣いたんだ。オファーを受けてすごくワクワクしたよ。人工装具をつけることで、オギーの気持ちに入っていきやすかった。ちょっと鼻がかゆかったけどね(笑)」
物語はオギー、クラスメートの少年、オギーの姉、姉の友人の四つの視点で語られる。
「原作のこの方法は我々が持つ“先入観”に気づかせてくれる。『手のかからない子』とされている姉が抱える孤独、イケてるふうな姉の友人の思わぬ秘密……見終わるころには、人は誰もがそれぞれの人生のヒーロー&ヒロインなんだとわかる」(監督)
もし、アイスクリーム屋でオギーのような子に出会ったら? 映画を観れば、きっとその答えが見つかるだろう。
「オギーだけでなく、すべての人が人とは違う顔を持つ“フェイシャル・ディファレンス”だよね。僕はいまなら自分の子にも『自分たちと何ら変わらないよ』と教えられる。その子にも普通に『アイスクリーム、美味しい?』と笑いかければいいんだ」
ジェイコブも同意見だ。