採用コンサルタント/採用アナリスト 谷出正直さん(38)[AERA 2018年7月2日号より、撮影:鈴木芳果]
採用コンサルタント/採用アナリスト 谷出正直さん(38)[AERA 2018年7月2日号より、撮影:鈴木芳果]

 フリーランスで年収600万円以上を稼ぎ続けるには、安定的に複数のクライアントを持つことが必須だ。現に苦労しているフリーランスも少なくないし、独立をためらう多くの会社員が気になるのもここだろう。

「フリーランスが避けるべきは焼き畑スタイルです」

 そう警告するのは、採用コンサルタントでアナリストの谷出正直さん(38)だ。2年前に人材会社エン・ジャパンから独立以来、営業したことは一度もないのに、会社員時代には全く縁のなかった大学や企業からセミナーや相談が殺到。メディアでも引っ張りだこだ。

 谷出さんがいう「焼き畑スタイル」とは、新しく仕事を取るための営業に常に時間をかけるやり方。運良く仕事が取れても、インプットや準備が不十分になると、中途半端なパフォーマンスしか出せない。その結果、顧客は失望し、次の仕事につながらない。するとまた営業に行かざるを得ないという負のスパイラルだ。

 ではどうすれば、営業せずに済む状況をつくれるのか。

 カギは、仕事への向き合い方にあるようだ。谷出さんは会社員時代、採用に関する専門性を磨き、「誰かが困った時に真っ先に浮かぶ顔になること」を常に心がけていた。谷出さんはそれらを「圧倒的にやりきり」「期待を上回る結果を必ず出す」ことにこだわってきた。そうして見えない信用が積み重なれば、依頼は向こうからやってくるようになる。

 谷出さんによれば、お客さんにとって自分が◯◯会社の社員としてではなく、個としてどう評価されているかは、担当の引き継ぎや退職時に如実にわかるという。

「同僚や先輩を見ていて気づいたんです。本当にお客さんの役に立って感謝されている人は、挨拶に行った時、お客さんがものすごく残念がる。そして特別に送別会を開いてもらえたりするんです。逆にそこそこのアウトプットしか出さなかった場合、あっさりと『後任の方、よろしく』となる」

 谷出さんが前者だったことは言うまでもないが、さらに独立後の2年間、谷出さんは絶対に依頼を断らない「イエスマンキャンペーン」を展開した。もちろん金額の多寡にかかわらず、会社員時代に輪をかけて、相手の期待以上の結果を出すことに全力投球した。「テイクはなくてもひたすらギブ、ギブ、ギブです」

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