苦境を招く要素は、ほかにもあるという。この世代は年齢を重ねた分、高収入であり、社会経験が豊富で情報にも敏感なため、子どもにお金をかけやすい傾向が見られるようだ。

 食べ物も生活用品も、安さより質の良さを優先。習い事もしかり。小中学校も私立を志望するなど、よりよい教育環境のためには出費を惜しまない。資金がなければ諦めがつくが、目先のお金はあるので、「やってあげられることは何でも」となりやすいのだ。結果、毎月の固定費が膨らんでしまう。

「会社でのポジションが上がると忙しさも増す。体力に自信がなくなることもあり、ベビーシッターや家事のアウトソーシング費用も上がりがちです」(同)

 親の年齢も上がるため、子どもに手がかかる時期に介護が発生することも。結果、夫婦のどちらかが仕事を辞めざるを得ない、または自費の介護サービスを頼むことになり、家計の負担は増えてしまう。

 子どもの誕生を機にマイホームを購入する家庭もあるだろうそうすると退職までの期間が短いために、月々の支払額が大きくなるか、退職以降もローンを返済することになる。人生の3大支出といわれる住宅費、教育費、老後の生活費、さらに親の介護費が短期間に重なってのしかかることが想定されるわけだ。

「夫婦で話し合い、人生を見通してみることが絶対に必要です」

 と氏家さんは強調する。可能なら専門家に相談したいところだが、次に挙げる点について夫婦で検討しておくだけでも、リスク回避がしやすいそうだ。

●妻の仕事をどうするか。フルタイムかパートか、再就職の時期はいつか、など子どもの教育をどうするか。
●小学校から私立に通わせたい、留学させたいなど、こだわる点は何か、など
●家の購入がまだなら、いくらくらいの予算で、どのような家を買いたいのか、など

「両家の親に、介護生活になった場合の備えがあるかどうかも聞けるといいですね」(同)

 夫婦それぞれの希望や条件が分かったら、次に優先順位をつけ、限りある資源をより優先度の高い分野に投入する。家計における選択と集中だ。(ライター・松田慶子)

AERA 6月25日号より抜粋