そんな状況では選手に甘えが出てもやむを得ないし、その構造が変わらない限りリーグの質の向上も、発展もないと訴える。

「たとえば勝利給が出るだけでも選手は頑張るし、もっと試合にギラギラ感も出る。そのへんを何とかしたいとは思います」

 選手としてのキャリアが発言力にもつながることを考えれば、東京五輪に出場できるか否かは大きな違いだろう。もちろん、それが簡単でないことは大滝が誰よりも理解している。

 ただ、小柄な選手が揃うなでしこジャパンの前線で、身長172センチの大滝は、一つの武器になる可能性も秘める。

「FWなので、まずはチームを1部に上げるためにゴールを挙げたい。そして、どんなにやってもあと2年だし、一度決めた以上は最後までやりきりたい」

 及川、池原、大滝。それぞれの挑戦は立場も環境も異なるが、周囲に流されず目的に向かう姿には共通した意志の強さが感じられる。

 すでに東京五輪では女子ホッケーが5大会連続で、女子ハンドボールは44年ぶり、女子サッカーが2大会ぶりに出場することが決まっている。彼女たちにどんな結果が待っているかは誰にもわからない。だが、結果がどうなろうともその挑戦が決して無駄ではないことは彼女たちがいちばんわかっている。(文中敬称略)(スポーツライター・栗原正夫)

AERA 6月18日号より抜粋