(c)朝日新聞社
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 自動車関連事業に参入したパナソニック。かつて創業者の松下幸之助は「クルマづくり」を夢見たというが、その念願を叶えつつあるように見える。

 自動車事業への参入を松下幸之助は模索していた。1974年に出版された著書『道は明日に』では「自転車の次には自動車が発展すると戦前から信じており、自動車製造をやりたいものだと心ひそかに思っていた。戦後、本気で自動車製造の道を研究した」と記している。78年にはダイハツ工業と電気自動車(EV)の共同開発を始めた。

 パナソニックがいまの自動車関連事業につながる蓄電池の研究開発をスタートしたのは43年のこと。EVや自動運転の広がりとともに、クルマがネットワークにつながる「情報化」、自動運転による「電子化」、そして「環境対応」といった進化が、デジタルカメラや電子ミラーなどのデジタル技術をはじめ、センサー技術、画像処理技術、照明技術、電池・電源技術を生かす時代の到来に結びついた。

 完全自動運転になれば、車内空間はリビングや書斎としても利用することができ、活躍する領域はさらに増えるともいえる。自動車関連事業の中核・車載電池は2018年3月時点で、テスラやトヨタ自動車など12社74車種に採用されることが決まっている。

 小型EV向けには充電器やモーターを組み合わせた製品を開発。今年度中に、完成車メーカーに納入する。電池を含めてEVの「心臓部」を提供するビジネスに挑む。

 パナソニックの津賀一宏社長はクルマを一台丸ごとつくる事業への参入を否定し、創業者が夢見た自動車製造はまだ実現には至っていない。だが創業以来、最も自動車産業と緊密な関係を持つ立場にいることは間違いない。(ジャーナリスト・大河原克行)

AERA 6月18日号より抜粋