「経済的には何とかなるとしても、親に全面的に頼ってきた姉が、本当に一人で暮らしていけるのか……。水道費の支払い一つしたことがない人なんです。よく『お姉さんが親元にいて安心ね』と言われますが、ずっと庇護されて育った姉が、親の介護どころか、自分の身のまわりのことだって、高齢になって突然できるようになるわけがないと思うんです」

 親亡き後、父の用意したマンションで一人暮らしをする姉の姿を思い浮かべてみる。本当に一人になったら、姉にとって頼れる身内は、自分しかいない。

 一人暮らしの高齢女性は、ただでさえ騙されやすいけれど、姉は大丈夫だろうか?

 親の介護もまだ始まっていないのだが、姉が倒れてからの「きょうだい介護」のほうが、よりリアルに心配になると藤田さんはつぶやいた。

「姉に対して、好きなことばかりやってといった非難めいた感情はないんです。胸の内にあるのは、肉親だから自分が面倒をみるに違いないんだよねという諦念というか覚悟というか。そんなもやっとした思いです」

(ノンフィクションライター・古川雅子)

※肩書などは新書出版時(2016年)のものです。