麻生太郎財務相 (c)朝日新聞社
麻生太郎財務相 (c)朝日新聞社

 森友学園との国有地取引をめぐる決裁文書改竄問題で、財務省が職員20人を処分した。 「ノーパンしゃぶしゃぶ」問題など、90年代の一連の接待汚職以来の大不祥事だ。

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 6月4日、決裁文書の改竄問題について緊急記者会見を開いた麻生太郎財務相は、いつもの軽口を封じ、質問に神妙な面持ちで答えた。ただ、一つだけ愚痴に近い言葉が出た。

「どうしてこうなったのか。どこからスタートしたのか私らにはわからんのであって、それがわかれば苦労しない」

 メディアは「まるで他人事」と批判したが、麻生氏の本音はおそらくこうだ。

 森友問題はもともと安倍晋三首相夫人の昭恵氏と、森友学園の籠池元理事長夫妻のかかわりが発端であり、問題を大きくしたのは首相の「私と妻が関係していれば首相も国会議員も辞める」という答弁だ。なぜ安倍が原因の問題で、俺が責任を問われるのか──。

 財務省は、どちらかと言えば安倍首相から遠ざけられてきた官庁だ。財政再建に不熱心な首相が消費増税を延期しようとした際、何度も官邸を訪れて再考を求めた財務省幹部。その中には、森友処分の緊急会見で頭を下げた矢野康治官房長、太田充理財局長らもいた。財政再建の重要性を説き、増税延期に反対する彼らに対し、首相はいつも不機嫌だったという。

 なのに、なぜ財務省幹部は今回、そこまで首相を忖度したのか。麻生氏にはそんな気持ちもあったかもしれない。

 財務省は「官庁の中の官庁」といわれる。他省幹部と予算折衝するとき、財務省は折衝相手よりひとつ格下のポストの官僚が対応する。省全体が、他の省庁より1段階格上ともみえる位置づけだ。

 だがそれは、財務省自身が実力で手に入れた地位ではなく、予算をつかさどる「機能」としての慣例にすぎない。過剰な予算要求をつっぱね、いやがられる増税負担をのませるには、他省庁より発言力が強くないといけないからだ。

 そのぶん財務省は「悪役」を買って出るべき官庁でもある。

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