前監督・前コーチらの言い分は、関東学生連盟により虚偽と認定され、アメフト部員たちが「指示に盲目的に従ってきた」と、反省の声明を発信した。捜査機関による捜査や第三者委員会の調査はこれからだ。

 菊地弁護士は、「情報発信が 容易で、気軽に動画を残せる現代でなければ、握りつぶされていたかもしれない事案」と指摘する。証言や証拠を精査すれば、事実を認定することは、以前よりはたやすくなったはずなのだ。一方で、人々が触れる情報には別の大きな変化もある。SNSの発信力が高まり、フェイクニュースも横行している。

「ポスト真実という点で、日本は世界の最先進国」と、ジャー ナリストの津田大介さんは言う。

「米大統領選でのフェイクニュ ースの母胎となったのは、4chanという巨大匿名掲示板でした。日本では、以前から2chに代表される匿名掲示板文化があり、まとめサイト文化を生み、スマホ、SNS時代になって、世論への影響力を増しています」

 メディアが見出しを中心にななめ読みされる、という状態は今も昔も変わらない。しかし、 現代は「シェア」があり、拡散された情報は真贋にかかわらず影響力を持つ。

 事実と論理は、あらゆる学問や言論の礎となるものだ。

「誤謬を発信するサイトは、閲覧により広告収益を得ている場合も、工作として行っている場合もあります。構造を理解し、ウソを指摘し続け、ファクトで対抗し、中間層の説得を続けるほかないと考えています」(津田さん)

(編集部・澤志保)

AERA 2018年6月11日号より抜粋)