「働き方改革、高度プロフェッショナル制度という言葉に誤解があると考えています。多くの人は『働き方を改革して、長時間労働がなくなる』『専門性の高い職種に適した仕組みだろう』と捉え、内容を精査しない。高プロの実態は、実労働時間を客観的に把握しなくてもよい制度であり、過労死を促進しかね ない。メリットを享受するのは、 労働者ではなく、経営者です。この点を十分に議論する必要がありました」

 厚生労働委員会で与野党の攻防が繰り広げられたが、内容は「まったく十分ではなかった」と上西さんは指摘する。

「政府は質問に答えず、論点をずらすことに終始していました。ところが、テレビや新聞で大きく報じられず、不誠実な答弁の動画がネットにアップされても多くの人は見ない。言論が冒涜される現場を知ってほしい」

 上西さんは、加藤勝信厚労大臣の追及をかわしていく手法を、下記のように例えた。

──朝ごはんは食べなかったんですか?

「ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておきます)」

──何も食べなかったんですね?

「何も、と聞かれましても、どこまでを食事の範囲に入れるかは、必ずしも明確ではありませんので」

──では、何か食べたんですか?

「お尋ねの趣旨が必ずしもわかりませんが、一般論で申し上げますと、朝食をとる、というのは健康のために大切であります」

 上西さんのこうしたツイートには、「ご飯論法」と名前がつき、ハッシュタグで拡散された。緻密なデータも、膨大なテキストも、自身で発信している。それでも届かない多くの層へ、「本当にこのままでいいのか」と投げかけた一石だ。

 事実と虚偽が並んだとき、事実をどう見定めればよいのか。番町法律事務所の菊地幸夫弁護士は、日大アメフト問題を例にとり、こう解説する。

「両者の説明が食い違った場合、事実説明が詳細で、筋が通っているか、虚偽の説明を行う動機はあるか。指導者側は、加害選手の会見内容の大筋は認めながら、一部を否定するという形での反論でした。私の主観ですが、両者の見解を突き合わせただけで、選手の言い分が事実に近いのでは、という推論が働きます」

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