西野監督は、4-3-3の布陣を基本にしたハリルホジッチ前体制は柔軟性を欠いていたと、変化を強調したが、逆に試合のなかでの臨機応変な対応を欠き、新たなオプション(3バック)の導入意図すらはっきりしない戦いに終始した。

 8分に不用意なファウルからのFKで失点すると、51分にも守備の乱れから相手にPKを与えるなど失点を重ねた。

「(ガーナの出足が)想像以上によく、圧力をかけられた。思惑通りいかなかった」と西野監督は話したが、監督交代という“劇薬”もチームを大きく変えるまでにはいたらなかったようだ。

 一般的にサッカーでは指揮官が代われば、メンバーも戦術も変わるものとされる。指揮官の色を出すためでもあるが、メンバーを変えなければチームを変えていくのは難しいからでもある。今回は、指揮官が代わったもののメンバーは大きく変えずに、戦術に手を加えるにとどまった。つまりハリルホジッチ体制で数少ないポジティブな面とも言えた“若手の勢い”を取り除き、負の部分だけが残ってしまったようなものでもある。

 たとえば、チームに刺激を与える意味でも、先に挙げた中島しかり、オランダ移籍1年目で9ゴールと結果を出した堂安律(19、フローニンゲン)や抜群のスピードを誇りFC東京でも好調だった永井謙佑(29)らを抜擢する選択はなかったのか。

 23人の名前を淡々と読み上げた西野監督は、まばらな拍手のなか会場をあとにした。その空気感こそが、現在の期待値を示している。日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「W杯で勝つ確率を1%でも2%でも上げたい」と異例の時期での指揮官交代に踏み切ったが、その確率が上昇しているかは疑問である。(スポーツライター・栗原正夫)

AERA 2018年6月11日号より抜粋