日本大学アメフト部の問題は、大学の運営体制にも懸念を抱かせる事態を招いている(※写真はイメージ)
日本大学アメフト部の問題は、大学の運営体制にも懸念を抱かせる事態を招いている(※写真はイメージ)

 日本大学アメフト部の問題は、大学の運営体制にも懸念を抱かせる事態を招いている。自浄作用はなぜ機能しないのか。背景には体育会主導の権力構造が浮かぶ。

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「謝っても謝りきれない。このような事態を招いてしまい申し訳ございません」

 5月25日。日本大学の大塚吉兵衛学長は沈痛な面持ちで頭を下げ、アメリカンフットボール部員による悪質タックルでケガを負わせた関西学院大学の同部員に謝罪した。だが、この会見では内田正人前監督や井上奨前コーチの責任について明確な判断が示されなかった。2人の「弁解」をことごとく退け、事実上の永久追放である最も重い「除名」処分を下した29日の関東学生アメフト連盟の対応との違いが鮮明に浮かぶ。

「大学の支配構造は日大闘争の時とまったく変わっていません」

 日本大学全学共闘会議(日大全共闘)芸術学部闘争委員長の眞武善行さん(69)は語る。

 半世紀前の1968年5月27日。20億円もの使途不明金の発覚や、学生に対する弾圧などでたまりにたまった日大生の不満が爆発。学生運動史上、東大全共闘と並ぶ「日大全共闘」が結成された。当時、学内で絶対的な権力を掌握していたのが、柔道部出身の古田重二良会頭。体育会を経て日大職員となり、学内で出世コースを歩むという構図は、相撲部出身の田中英壽理事長や、常務理事でもあり事実上ナンバー2の座にあった内田前監督も同じだ。

 日大全共闘の森雄一さん(72)は、当時をこう述懐する。

「応援団や空手部の部員にバットで殴られ、全治数カ月のけがを負う学生もいました。襲われた学生会執行部の学生が無期停学処分になる一方、襲った学生はおとがめなしでした」

 体育会学生の暴力を是認したとも取られかねない措置だが、現在はどうなのだろうか。

 日大の運動部は「保健体育審議会」(保体審)という本部直属の組織の所属となっている。保体審の事務局長は、内田前監督や田中理事長も歴任した重要ポストだ。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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