稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
コメは数日間水に浸して発芽玄米にして炊いております。ウマし(写真:本人提供)
コメは数日間水に浸して発芽玄米にして炊いております。ウマし(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】稲垣さんはコメを数日間水に浸して発芽玄米にしている

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 先週号のアエラで「究極のチャーハン」が特集されていました。理想のパラパラを実現するには、ご飯の温度、卵を入れるタイミング、どれが正解かという詳細リポートです。

 興味深かったのは、昔のレシピではチャーハンの材料が「冷やご飯」だった理由。当時は冷蔵庫がなかったので、そもそもチャーハンとは残った冷やご飯を消費するための料理だったのです。それが、冷蔵庫、さらに電子レンジの登場で、チンした温かいご飯で作った方がおいしいという説が登場し、以後、究極を競って様々な技が考案され続けているのだと。

 なるほど、やはり家電は人生を複雑にしますわねオホホホ……と高笑いをしたのは、実は最近、まさに「究極のチャーハン」のレシピを発見してしまったから。

 冷蔵庫も電子レンジもない我が家では、まさにチャーハンとはおひつで保存した冷やご飯をおいしく食べるための料理でして、3日に一度は食べるヘビーローテーション。で、様々な試行錯誤を繰り返した結果、もうこれ以上はないという味にたどり着いてしまいました。

 以下レシピです。

 ■材料 冷やご飯、ごま油
 ■作り方 (1)鉄鍋に冷やご飯を入れて適当に広げる (2)上からごま油を適当にかける (3)ふたをして火にかける
 以上。これがひっくり返るほどうまい。適当にかけた油の効果で、焦げ方に大いにムラがあって、バリバリのせんべいみたいな食感から、わずかに色づいた上品な焦げ味まで無限のバリエーションが素晴らしく、いちいちうっとりモグモグかんでいると、気づけばご飯がなくなっています。そもそもチャーハンとは焼き飯ですから、米がジージー焼けていることが大事なのです。もちろんパラパラでもなんでもありませんが、おひつに残った玄米ご飯で作るのでそもそもパサパサです。パサパサとパラパラは近い。

 で、こんなものを「究極」と認定してしまうともうこれ以上はない。これこそを真の究極というのではないでしょうか。

AERA 6月4日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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