プーシキン美術館館長 マリーナ・ロシャクさん(左)、現代美術作家 森村泰昌さん/森村さんは1985年、ゴッホの自画像に扮する写真作品を皮切りに、自画像作品で注目を集めてきた美術家。ロシャクさんは前衛美術のキュレーターなどで活躍していた2013年、同美術館の館長に電撃的に就任(撮影/植田真紗美)
プーシキン美術館館長 マリーナ・ロシャクさん(左)、現代美術作家 森村泰昌さん/森村さんは1985年、ゴッホの自画像に扮する写真作品を皮切りに、自画像作品で注目を集めてきた美術家。ロシャクさんは前衛美術のキュレーターなどで活躍していた2013年、同美術館の館長に電撃的に就任(撮影/植田真紗美)
フランス絵画コレクションで知られるプーシキン美術館から、17~20世紀の風景画65点が来日。7月21日~10月14日、大阪・国立国際美術館へ巡回(撮影/植田真紗美)
フランス絵画コレクションで知られるプーシキン美術館から、17~20世紀の風景画65点が来日。7月21日~10月14日、大阪・国立国際美術館へ巡回(撮影/植田真紗美)

 現代美術の愛好家でもあるロシアの国立美術館「プーシキン美術館」のロシャク館長と、同館で昨年、個展を開いた現代美術作家の森村泰昌さん。そんな「大胆すぎる」2人が、新プロジェクトを始動か。

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 東京・上野の東京都美術館で、7月8日(日)まで開催中の「プーシキン美術館展──旅するフランス風景画」。ロシアの国立美術館である同館が誇るモネ、ルノワール、セザンヌ、ゴーガンといった教科書級のフランス絵画を、間近で目にできる貴重な展覧会となっている。

 4月中旬には、同展のオープニングに合わせ、プーシキン美術館のマリーナ・ロシャク館長も来日。同美術館とゆかりの深い、ある日本人現代美術作家と東京での再会が実現した。

 その作家とは、昨年1~4月に同美術館で個展を開催した森村泰昌さん。自らが有名絵画の登場人物になりきって、その世界に入り込む作品で知られる現代美術作家だ。

森村泰昌さん(以下、森村):こうして東京で再びお目にかかれてうれしいです。そもそもプーシキン美術館での個展のお話をいただいたときは、ありえない話、と思ったのが正直な気持ちでした。というのも、プーシキンは膨大な古典の名作をコレクションする由緒ある美術館。その美術館が私のような現代作家の個展をやるという試みは、大胆すぎると思ったからです。

マリーナ・ロシャク館長(以下、ロシャク):そうでしたか。森村さんはロシアの現代美術ファンにとっても知られた存在で、もちろん私も以前からその作品をよく知っていました。ところがそんな森村さんが、ロシアで本格的な個展をしたことがないと知って、これはやるべきだ、と。

森村:先ほどロシャク館長の記念講演を聴かせてもらったのですが、そもそもコレクターの大胆さが、プーシキンの伝統としてあったようですね。そんな伝統をロシャクさんが受け継ぎ、私の展覧会に結びついていったのかなとも思いました。

ロシャク:一種冒険ともいえる展覧会ではありましたよね。今開かれているこの「プーシキン美術館展」も、旅をテーマにした展覧会ですが、プーシキンでの森村展のテーマは「美術史への旅」。古典作品が並ぶ常設展の続きとして、森村作品が紹介されるという展示もした。例えばレンブラントの展示室の入り口に、レンブラントをテーマにした森村作品が展示されたり。ただ私は、芸術を新しい芸術、古い芸術に分けることはしません。私にとってあるのは、“芸術”のみですから。

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