パーソン・センタード・ケアについては、施設に勤める「専門職」と言われる人たちでさえ、きちんとした教育を受けていないのではないでしょうか。だから虐待が起きてしまう。とにかく、高度なケアができるプロを、国を挙げて育成するということが急務です。

――シリーズ3作目は、監督自身が両股関節の手術を受けるシーンから始まります。介護する側が年をとったり、病気をしたりする中で、どのように介護を続けていくのか。多くの人にとって切実な問題です。

 両股関節の痛みはずっと前からあって、手術をする直前は車椅子が必要な状態にまで悪化していました。手術で人工股関節に全置換して、いま身体障害者3級、介護保険では「要支援2」がついています。

 2回の手術でリハビリも含めて7週間入院しましたが、母の介護については事前に「チーム関口」の体制をしっかり作りました。おかげで入院中は、母から解放されて、担当医もイケメンで、実はすっごく楽しかったんです(笑)。

 ただそのためには段取りが命。闘う必要もあります。例えば、母をお風呂に入れるのに、ヘルパーさんではなく訪問看護師さんをお願いしています。母は幼いころから看護師になりたいと夢見ていた人なので、看護師のケアは喜んで受けるだろうと考えたんです。

 でもかかりつけ医は「お母さんは要介護3でまだ歩けるので、訪問看護師は必要ない」と言いました。でもそこで諦めちゃダメ。私は地元の横浜ではなく、テレビで知り合った名古屋の医師にお願いして、「看護師が必要」という指示書を書いてもらいました。

 さらに、デイサービスに行きたいと思ってもらえるように、母好みのイケメン介護福祉士をケアマネさんに探してもらいました。いろいろな場面を想定して、ひとを動かす。こういうのがパーソン・センタード・ケアですし、私も楽しい。

――そこまでお母さんのことを考えて手を尽くすというのは、すごい愛がなければできないのでは?

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