このスマホが決済に向く理由はいくつかある。まず、「見える化」ができる。クレジットカードの利用履歴やポイントの残高を画面で見られるから、使いすぎの防止に役立つ。また、カードを複数枚もっていると、サイフならパンパンに膨れるが、スマホは何枚登録してもスマートなままである。さらに、さまざまなキャンペーン情報はメールのプッシュ機能(ユーザーが操作しなくても自動的にメールを受信する仕組み)で直接スマホに届くから見逃すことはない。カードのうっかり延滞も事前にメールでリマインド(注意喚起)してくれる。

 具体的にはアップルペイ、グーグルペイ、ラインペイ、楽天ペイ、オリガミペイ、アリペイ、ウィーチャットペイなどがある。このうち、前から二つが非接触ICを使って店の端末にかざすだけで買い物ができる。残りがQRコードを端末に読み込んで買い物をする。04年に「おサイフケータイ」が誕生して、携帯電話に電子マネーを入れて決済できるようになった。スマホでクレジットカードを登録して利用できるアップルペイが日本に上陸したのは16年。相前後して「〇〇ペイ」と呼ばれるスマホ決済が続々出てきた。

 最近急速に広がってきたのがQRコードのグループである。店舗側にとって導入するのにほとんど初期費用がかからず、加盟店手数料も安いからだ。ゼロというケースもある。楽天やNTTドコモ、アップルなどIC型のスマホ決済に力を入れてきた大手ネット各社も参入して市場を膨らませようと熱心なのだ。

 ここでひとつ、大きな懸念が浮かび上がる。個人情報の使い道だ。

 事業者の目線はどちらの方式を使ったとしても、キャッシュレス比率を上げることよりスマホを使って新たなマーケティングを行うことに向いている。スマホで買い物すると、そのたびに購買情報が事業者に集まってくる。「何を」「いくらで」「どの店で」「いつ」購入したのか、といったデータが集積すると、利用者の生活パターンや趣味、嗜好なども手に取るようにわかる。店舗側だけではなく、ドコモやTポイント(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)、楽天のような共通ポイント業者にとってそれが最大の目的である。

 しかも、スマホが一般化したことで、膨大な量のデータが集まるようになった(ビッグデータ)。それらをAIの力を借りるなどして、ソーシャルCRMという技法で顧客特性を捉えながら分析する。この方法がかなりの成果を上げているようなのだ。今後はスマホから飛び出してネット外の企業に向けた送客を含め、さまざまな仕掛けを考えていくようになるだろう。

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