若冲や雪舟らの名作 背景にある「つながり」を解き明かす展示

矢内裕子AERA

重要文化財「仙人掌群鶏図襖」伊藤若冲筆/江戸時... (07:00)AERA

重要文化財「仙人掌群鶏図襖」伊藤若冲筆/江戸時... (07:00)AERA
 日本美術の名作がいかに生まれたのか。それぞれの作品のつながりを可視化した、画期的な展覧会が開催中だ。

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 国宝「普賢菩薩騎象像」(平安時代)もあれば、伊藤若冲の「仙人掌群鶏図襖(さぼてんぐんけいずふすま)」や雪舟等楊の国宝「天橋立図」(室町時代)もある。同じく国宝の「風俗図屏風」と並ぶのは、記念切手としてもおなじみ、菱川師宣の「見返り美人図」(共に江戸時代)だ。

 綺羅星のような国宝・重要文化財を含む、約130点の名作が一堂に会し、12のテーマごとに展示されているのが「名作誕生 つながる日本美術」展。上野・東京国立博物館で5月27日まで開催中だ。

 それぞれが名作である作品を見せる切り口が「つながる」という言葉。いかなる名作であっても、独立して生まれるわけではない。海を越えて渡ってきた作品や技法を知り、古典を学びながらも新しい美意識を持つことで、日本美術はつねに変革されてきた。

 鑑真ゆかりの木彫がどのように仏教美術に受け継がれたか。あるいは中国絵画と雪舟、古典文学と工芸品、そして近代絵画に至る「つながり」を、関連する作品を通して具体的に見せることで、美術に潜むダイナミズムを解き明かそうという、野心的な試みなのだ。

 多くの人が足を止める展示は「若冲と模倣」。若冲は中国や朝鮮の絵画を模写し学ぶ一方で、実物写生に努め、動植物を細密に描いた。ここでは若冲が手本とした陳伯冲や文正が描いた「鶴」がどのように変容したのかが、作品を通して示される。「鶴」という同じモチーフであっても、時代と絵師の個性によって、異なる鶴の姿が現れるのだ。

 圧巻は金を背景に描かれた、若冲の「仙人掌群鶏図襖」。生涯にわたって鶏を描き続けた若冲が、晩年に描いた作品だ。

 この作品には、若冲自身の変化と模倣がみてとれる。たとえば初期の「雪梅雄鶏図」は、東本願寺に伝来した「雪中遊禽図」の背景を切り詰め、さらに自身が描いた雄鶏図と同じ様子の雄鶏を描いたもの。この鶏は「仙人掌群鶏図襖」の右端(第一面)に描かれた鶏とそっくりだ。さらに背景のサボテンと岩の形も、梅の枝ぶりとよく似ており、原型となった作品と言えるだろう。

 若冲の水墨画の例としてあわせて展示されている「鶏図押絵貼屏風」は、襖絵のあとに描かれたものだが、やはりそれまでに描かれた鶏図と共通した特徴がある。

『伊勢物語』や『源氏物語』などの古典文学も、特定の場面やモチーフが工芸品に用いられてきた。「夕顔蒔絵大鼓胴(ゆうがおまきえおおかわのどう)」には、『源氏物語』の「夕顔」のエピソードから、扇、夕顔が描かれている。この二つだけで「夕顔」を連想できるほど、物語と意匠は長く愛されてきたのだ。

 名作が生まれる背景には、作品を愛したそれぞれの時代の人々がいる。作り手ばかりではない、名作を伝えてきた人々の存在も実感できる展覧会だ。(ライター・矢内裕子)

AERA 2018年5月28日号

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