何が言いたいのかというと、今の日本の都市は安さばかりを追い求めてきたなれの果てということです。昼飯に500円も払わない、なんて話になればそりゃ、大手牛丼チェーンなどのファストフードしかやっていけなくなります。しかし、ここにはそんなもの食うか!! と言って食い物にちゃんと金を払う消費者が存在する。彼らだって決して裕福じゃないんです。給料だって読者のみなさまより間違いなく安いです。

 日本ではそういう状況で昼飯に千円とか使うと、贅沢だ! とすぐ言われるわけですが、パリは違う。俺たちが払わないと、こんなに居心地の良い場所がなくなってしまう! こんなにうまいパン屋が消えてしまう!というロジックになるわけです。食が人生の中でどれだけ大事なものか、ということをよくわかっている。その分もちろん味にもサービスにもうるさい。

 でもきちんとそれに見合った対価を支払う。これが文化というものではないですか? パリには、日本の街が失ってしまった日常の文化がある。だからこそ私はこうやって本当の都市文化を楽しみにやってくるのです。これが本当のインバウンド。勘違いしてる人が多すぎますね。

AERA 2018年5月28日号

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ぐっちー

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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