晩酌や寝酒の量が知らず知らず増えてくる……。依存症未満でも、お酒で日常に支障が出る「問題飲酒」は誰の身近にもある(撮影/写真部・大野洋介)
晩酌や寝酒の量が知らず知らず増えてくる……。依存症未満でも、お酒で日常に支障が出る「問題飲酒」は誰の身近にもある(撮影/写真部・大野洋介)
あなたのお酒の飲み方、大丈夫?(AERA 2018年5月28日号より)
あなたのお酒の飲み方、大丈夫?(AERA 2018年5月28日号より)

 元TOKIOの山口達也さんは退院当日に酩酊したことを認め、アルコールの問題が浮き彫りになった。アルコールで日常生活や社会生活に支障が出ることを、「問題飲酒」という。

【あなたのお酒の飲み方、大丈夫?「問題飲酒」チェックリストはこちら】

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 肝臓のy-GTPの数値は若干高いし、酔えば羽目を外すこともある。だけど、依存症まではいっていない。酒量が多く、ちょっと酒癖が悪いだけだ。そんな問題飲酒を抱える層にアプローチする試みがある。久里浜医療センター(神奈川県)の減酒外来だ。酒量を減らす、問題のない飲み方をするなど、目標にあわせた酒との付き合い方をサポートする。

 40代の会社員男性が来院したのは、妻が寝酒を心配してのことだ。同僚らと飲む機会は月に数度。寝つきが悪いからと始めた寝酒は、ウイスキー1杯から3、4杯へと増えた。酔うと怒りっぽくもなってきたようだ。

 同センターで減酒外来を担当する瀧村剛医師は言う。

「妻が今後に不安を持っていて、本人は今後もお酒は楽しみたいが、家での寝酒はやめたいとのことでした。そこで、寝酒を適正な量の睡眠薬に置き換え、減酒に取り組んでいます」

 多量飲酒者すべてが依存症に移行するわけではないが、予備軍も含めるとその数は実に多い。毎日アルコールを平均60グラム以上摂取する多量飲酒者は約250万人、うち治療の必要なアルコール依存症患者は107万人いると推定される。だが、受診にたどり着いているのはわずか約6万人(2014年厚生労働省患者調査)と6%に満たない。表は、飲酒習慣から問題の有無の目安を測るチェックだ。ドキリとする人は多いのでは。

 飲酒で脳に起こる変化を、自然科学研究機構生理学研究所の柿木隆介医師はこう解説する。

「酒は百薬の長と言うように、ほろ酔い程度なら、脳にはα波とドーパミンが出て、リラックスしている。そのあたりでやめられればいいのですが」

 脳にはアルコールに弱い部位が3カ所ある。運動機能を司る小脳と記憶を司る海馬、理性を司る前頭葉だ。酔うと千鳥足になってろれつが回らなくなり、記憶が抜け落ちる。理性のタガが外れ、失言して信頼を失い、暴力行為やセクハラに及ぶというなら、目も当てられない。

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