「非正規雇用者は給料が安く、男性としての自己肯定感や自信を持ちづらいため、ここぞという時に勇気が出せず、積極的に恋愛やセックスに踏み切れなくなります。成功体験どころか失敗する経験も積めずに、諦めてしまうのです」(西郷さん)

 一方で、働き方だけでは片づけられない「ゴブサタ」の悩みも、アンケートから浮き彫りになった。

「チューとかハグとか、スキンシップは毎日必ずするのですが」

 アンケートに答えてくれた一人、都内に住む会社員のヒトミさん(29、仮名)は打ち明ける。会社員の夫(34)との「空白期間」は3年余になるという。

 5年前に事実婚をした。最初の1、2年はたまにする程度だったが、3年目に入るあたりから夫が拒むように。それほど仕事が忙しいわけではないのにヒトミさんが夜誘っても「明日仕事だから」と断り、休日でも自分でマスターベーションをしたからとセックスを拒否する。そもそも、夫はセックスが好きではないのだという。

 何とか壁を乗り越えようと、ヒトミさんは「スローセックス」も試みた。互いを労りながら肌を重ねるという、当時話題になっていた愛撫テクニックだ。だが、夫は勃起しなかった。

 ヒトミさんは、夫は愛情を注いでくれているので満足しているというが、心情を吐露する。

「したいと思いつづけています」

 ほかにも、消極的な女性へのいら立ちからくる、男性側の悩みもあった。

「あまりに彼女(27)がセックスに淡泊で、消極的」(29歳、会社員男性)

 若くて健康な男女がセックスをしなくなったのはなぜか。日本性科学会理事長で、長年にわたり性の相談を受けている産婦人科の大川玲子医師は、「親からの精神的自立ができていないのではないか」と指摘する。

「セックスをするということは、親に秘密ができる。つまり親からの自立です。昔のように単純化できないでしょうが、結婚もセックスもしないのは、結果的には親との境界が曖昧になっている気がします」

(編集部・野村昌二、中島晶子)

AERA 2018年5月28日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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