「セクハラにしてもナチにしても、彼は本心で言っているわけだから、正直ですよね。精神的に追い詰められてというのではなく、表情も病的なわけでもなんでもない。ただ安倍首相の森友・加計学園問題が自分に飛び火してきたのが不愉快だというのがよくわかる、憮然(ぶぜん)とした表情ですよね。彼は昔からずっとこういう調子でしょう」

 ではなぜ麻生氏が要職を占め続けているのか。野田氏は言う。

「日本では政治家が優秀で政治をやっているわけではなく、システムでやってきたということ。2週間前に質問条項を事前通告して、答弁も官僚に頼りきりなんて国は日本以外ありません。安倍首相にしても、国会中継を見るだけで、官僚に助けてもらわなければ答弁も判断もできそうもないなという印象を受けます。議会では議長が『○○君』と指名してから発言するスタイルですが、これも真剣に討議をしようという意識を感じられない。事前通告したこと以外質問するなということも含めて、改めるべきでしょう」

 自民党内に麻生氏を公然と批判し、退任を求める勢力が存在しないことも、麻生氏を増長させてきた。

 前出の森田氏は、小選挙区制の弊害を指摘する。中選挙区時代なら自民党の公認がなくても立候補できて自分の地盤さえつくっておけば当選もできたし、派閥のおかげで公認権も守られていた。

「今は小選挙区で安倍首相がダメだと言えば立候補もできない。だから選挙のときに公認を得られるようにと自民党の中がおとなしくなりすぎている。身を犠牲にして闘う人がいなくなっている」

 森田氏はさらに続ける。

「岸田文雄政調会長も安倍首相の禅譲を狙うのか闘うのか右顧左眄(うこさべん)しているようじゃ情けないね。石破茂氏にしても『麻生さんお辞めなさい』とはっきりわかるように言わないと。そんなこともできない自民党は腐り切っていますよ。だから野党にしっかりした総理大臣候補になるようなリーダーがいて、過半数を取りうる候補者を立てられれば、政権交代すると思います。国民に諦めずに政権交代ができるということを伝えられたら、ひっくり返りますよ」

(編集部・大平誠)

AERA 2018年5月28日号