2005年3月、ニッポン放送株の争奪騒動で、大勢の報道陣に囲まれて記者会見に臨んだ堀江貴文・ライブドア社長(当時)=東京・六本木で (c)朝日新聞社
2005年3月、ニッポン放送株の争奪騒動で、大勢の報道陣に囲まれて記者会見に臨んだ堀江貴文・ライブドア社長(当時)=東京・六本木で (c)朝日新聞社

 旧体制に挑んだ挑戦者が、やがて次の世代と争う。その繰り返しが、社会を活性化させてきた。だから叫ぼう。「新世代、がんばれ!」と。

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 少し旧聞になるが、堀江貴文さんは2006年に証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載など)容疑で逮捕され、13年に仮釈放された後に『ゼロ』という著書を出した。逮捕・実刑判決ですべてを失ったが、再びゼロから1をつくってみせるという意思表明だった。その後、堀江さんは宇宙ビジネスへと向かう。少し褒めすぎかもしれないが、堀江さんはチャレンジを諦めない人生を歩み続けていると言っていい。

 00年代に堀江さんが闘ったのはプロ野球界であり、放送業界だった。プロ野球も放送業も「限られた席」しかない、既得権者が横行する世界である。そこに「株式買収」という劇薬を使って参入を試みたのが堀江さんだった。

 業界のボスたちはいきり立った。ボスたちの多くはエスタブリッシュメント(既成勢力の)企業に大卒で勤め、出世し、経営トップの地位をつかんだ人たちだ。既得権者でもあるエスタブリッシュメント企業の中での、さらに成功者である。会社の中で上司に刃向かい、出世するのは容易なことではない。権謀術数を駆使してトップに上り詰める人は少なくない。いわゆる挑戦者というイメージはあまりない。

 既得権者の得意技はお互いの利益を守るため、横の連携を強め(行き過ぎれば談合になる)、政治力を発揮して、自分たちの地位を堅固にすることである。その秩序を壊そうとする挑戦者は早く潰しておかねばならない。その餌食になったのが堀江さんだったといえるのだ。

 経済界で繰り返される旧世代と新世代の闘いの本質は、既得権者とチャレンジャーの闘いである。つまり既得権に守られた場所で安住したい旧世代と、それに挑戦する新世代との闘いなのだ。そこが年を取ってもチャレンジし続けるスポーツや囲碁・将棋の世界での新旧対立とは大いに違う。

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安井孝之

安井孝之

1957年生まれ。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京、大阪の経済部で経済記事を書き、2005年に企業経営・経済政策担当の編集委員。17年に朝日新聞社を退職、Gemba Lab株式会社を設立。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。

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