笹川大瑛(ささかわ・ひろひで)/理学療法士。運動理論の研究の傍ら、運動・トレーニング、姿勢改善のセミナーを開催。全国より医療従事者が集まるなど、支持を集める
笹川大瑛(ささかわ・ひろひで)/理学療法士。運動理論の研究の傍ら、運動・トレーニング、姿勢改善のセミナーを開催。全国より医療従事者が集まるなど、支持を集める

 健康と美容のために、ジムに通ったり、ジョギングをしたり、腹筋やスクワットなどの筋トレを日課にしたりしている人も多いだろう。それでも、慢性的な肩こりや不眠、腰痛などの不調が改善できず、悩んではいないだろうか。

 この解決策が実は「関節」にあるらしい。体調不良や引き締まらない体は、12カ所の「関節」の働きと、それを支える筋力の低下が根本原因。だから関節を守る筋肉だけを効果的に鍛えよう、というのが関節トレーニング、略して「関トレ」だ。

「関トレ」を考案したのは、理学療法士の笹川大瑛さん。スポーツ医療に定評のある病院でリハビリを担当してきた。

 様々な患者と多く接するうちに、(1)人は使えない筋肉は使わずに生活しており、決まった筋肉を使い続けることで関節に負荷がかかって症状が出ていること、(2)関節を安定させる筋肉は決まっていて、それは根本的に弱りやすいこと、(3)一つの関節を動かすためには二つの筋肉が関係しており、二つをバランスよく鍛えてはじめて、関節が正しいフォームで無理なく動かせるようになることを発見。これらを改善させるための「関トレ」理論を編み出した。

 笹川さんは言う。

「高齢者もアスリートも、人間なら筋肉や関節の構造は同じ。負荷の強度は違えど、関節を守る筋肉の鍛え方は共通です。どんなに身体能力の高いアスリートでも、関節を守る筋肉を鍛えなければ、ケガにつながり、パフォーマンスを最大限に発揮することはできません。一方、寝たきりの患者さんが、関トレをして起き上がれるようになった実績もあります。つまり、関トレはどんな人にも有効な基本のトレーニングなんです」

 笹川さんによれば、肩こりや腰痛など、一見関節を守る筋力の低下とは関係ないように思える不調も、「関トレ」を続けることで治るケースが多いという。

 たとえば、膝の関節を守る内転筋の筋力が低下している人は、代わりにももの裏の筋肉ばかりを過剰に使うために膝が曲がる歩き方になる。これをリハビリ用語では、「代償動作=トリックモーション」という。日常動作でこの動作のクセが繰り返されることで、膝に負担がかかって痛みにつながったり、使いすぎたももの裏の筋肉ばかりが発達して太くなったりする。

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