【体操】白井健三(21、左):男子史上最年少の17歳1カ月で世界選手権金メダル獲得。床運動で初めて「後方伸身宙返り4回ひねり」を成功させたことでギネス認定された/【野球】清宮幸太郎(18、中央):プロデビューから7試合連続安打で高卒新人新記録。高校では歴代最多の通算111本塁打/【格闘技】那須川天心(19、右)/小学5年で極真空手ジュニア世界大会で優勝。プロでは16歳で二つの王座、17歳でISKA世界王座を獲得。プロ戦績は25戦25勝 (c)朝日新聞社
【体操】白井健三(21、左):男子史上最年少の17歳1カ月で世界選手権金メダル獲得。床運動で初めて「後方伸身宙返り4回ひねり」を成功させたことでギネス認定された/【野球】清宮幸太郎(18、中央):プロデビューから7試合連続安打で高卒新人新記録。高校では歴代最多の通算111本塁打/【格闘技】那須川天心(19、右)/小学5年で極真空手ジュニア世界大会で優勝。プロでは16歳で二つの王座、17歳でISKA世界王座を獲得。プロ戦績は25戦25勝 (c)朝日新聞社

 10~20代前半の「ゆとり世代」が躍進している。スマホとともに育ち、旧世代の常識に とらわれない彼らは新たに「Z世代」とも呼ばれ始めた。

 4月29日。東京都渋谷区の東京体育館で、新たなスターが誕生した。体操の全日本個人総合選手権で、谷川翔(19=順天堂大)が優勝。2位には白井健三(21=日体大)が入った。大会11連覇を狙ったものの敗れた内村航平(29=リンガーハット)は、晴れやかな表情でインタビューに答えた。

「悔しいというよりも、若い選手がしっかり勝ってくれてうれしい」

 体操では、ゆかでギネス世界記録の認定を受けた白井やリオ五輪女子日本代表の村上茉愛(21=日体大)など、若返りが進んでいる。スポーツジャーナリストの生島淳さんは、その背景をこう語る。

「iPadなどで自分の演技をすぐに確認できる環境で練習してきたことで、自身の感覚と演技のズレを瞬時に確認できる。かつては練習場に連続写真が貼ってあったのですが、身体感覚とイメージとのズレを即座に修正して練習を重ねる体操では、この環境変化は大きい」

 他にも、5月にはプロ野球日本ハムファイターズの清宮幸太郎(18)が高卒新人のデビュー戦からの連続試合安打記録を更新したり、格闘家の那須川天心(19)がプロデビューからの無敗記録を伸ばしたりと、スポーツ界をにぎわせた。

 近年、卓球の張本智和(14)、サッカーの久保建英(16)、水泳の池江璃花子(17)など、10代前半から国際大会で活躍し、注目を浴びる選手が目立つようになった。

 アスリートが「早熟化」しているのはなぜか。トレーニング技術の進歩や、スポーツ医療、栄養学の発達などもあるだろうが、生島さんは「選手たちの意識」も重要な要素だと語る。

「イチローがメジャーデビューしたのが、2001年。この頃に生まれた選手たちは、日本人が世界で活躍する姿を普通にテレビで見ている。それゆえ、世界進出を『挑戦』だとは捉えていない。日本一を目指し、そこから世界に挑戦と段階的に考えておらず、常に目線は・世界・にある。幼少期から、世界で活躍する姿を自然とイメージできている世代なのです」

 天才プログラマーで起業家の山内奏人さん(17)のように、10代はビジネス界でも存在感を示し始めた。将棋藤井聡太(15)、ピアノの牛田智大(18)など、多岐にわたる分野でも若手の活躍が目覚ましい。「ゆとり世代」「さとり世代」などと言われ、物事に熱くならず覇気がない若者の代表として揶揄(やゆ)された世代でもあるが、その評価は急激に変化している。(編集部・作田裕史)

AERA 2018年5月21日号より抜粋