「学生時代から自分にカリスマ性があるとはまったく思っていなかった。むしろカリスマ性のある先輩の後を受けたことで『カリスマ的に引っ張るのは自分には無理だな』とあきらめて、チーム型の運営を心掛けてきた」

 いかにも日本的にみえるコミュニケーションの多さは、増えつつある外国人社員にも好評と言う。

「彼らは異文化の中で働いているからこそ共通認識を持つことの必要性を感じてくれている気がします」

 もちろん、アナログ一辺倒ではない。小泉の情報収集で最も威力を発揮するのは、社員同士が進めている仕事について話し合う「Slack(スラック)」というチャットシステムだ。いわば対話アプリ「LINE」の業務版のようなソフトで、仕事上のやりとりは基本的にスラック上で進む。小泉は各部署のスラックを注視し、問題や行き詰まりを感じたらすぐに自らの意見を書き込んだり、部署に直接足を運んだりして早い段階から話し合いに加わるという。

 小泉の経営手法には、最先端のITと昭和のにおいが同居する。

「昭和っぽさって、言葉を換えると面倒見の良さであり、温かさだと思う。ノスタルジックかもしれないけど、若い社員がそれを嫌がることはない。大企業も古き良きコミュニケーションを否定する必要はないのでは」

(文中敬称略)(編集部・小柳暁子)

AERA 2018年5月21日号より抜粋