自身がオープンな存在であることが、企業としての危機管理になっているという。

「現場が一番生の情報を持っているので、そこからいかに情報を吸い上げて正しい方向にもっていけるかを重視している。現場の情報をもとに、経営者として『何かヤバいな』という勘を働かせることが大事だと思っています」

 そんな危機管理が奏功した一例が、不正への対応だ。17年6月にはメルカリのアカウントを不正に取得し販売していた疑いで4人が逮捕され、同年11月にはメルカリで額面以上の価格で現金を販売したとして男女計4人が出資法違反の疑いで逮捕された。メルカリは早い時期から警察に情報提供するなど捜査に協力し、初回の出品時に住所・氏名・生年月日の登録を必須化するなど再発防止策を打ち出して影響拡大を食い止めた。

 小泉のキャラクターに加え、メルカリのオフィスに張り巡らされた仕掛けの数々も、オープンな雰囲気づくりに一役買っている。

 たとえば、メルカリには社長室や「社長のいす」はない。小泉がふだん仕事をするのは受付からほど近い、他の社員と同じデスクの一角。仕切りのない広々としたオフィスで、社員と同じTシャツ姿の小泉を見つけるのは少々難しいほどだ。

 部活のノリを思わせるイベントも多い。記者が訪れた日、オフィスにはろうそくを立てたケーキが登場。「誕生日おめでとう!」と声が上がり、多くの社員が拍手でその日誕生日を迎えたメンバーを祝っていた。

 小泉ら幹部と社員がひざを突き合わせることも多い社内の「飲み会」には、会社から補助が出る。部門のメンバーが温泉地などのホテルに集まり泊まりがけで戦略を議論する「合宿」も定期的に開かれる。会議に加えて、車椅子バスケットボールなどのスポーツでも絆を深める。

 小泉の経営の原点の一つは、早大で250人超の大規模サークルの代表を務めた経験。そしてもう一つが、メルカリの山田と、以前在職したミクシィの笠原健治(42)という二人のカリスマ創業者と共に働いた経験だ。

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