山内は、天性にも見える礼儀正しさと、話すうちに思わず引き込まれる頭の回転のよさで、大人たちの懐にすっと入り込む。仕事相手がほぼ全員年上だからこそ、相手の年齢によって態度を使い分ける必要がなく自然体でいられることも、大きな強みだろう。

 だが彼は、記者のそんな指摘も「そうかもしれないけど、本質的じゃないですね」とさらっと流す。

 インタビューで山内が繰り返したのが、「プロダクト・ファースト」という言葉だ。自身の会社が提供するプロダクト(製品やサービス)が全てで、それ以外の要素は「本質的ではない」と考える。自身の年齢も、世間からの称賛もまったく意に介さない。高校の授業が終わると、毎日12時間以上、徹底的にプロダクトのことだけを考えているという。

「僕を生意気だと思う人もいるかもしれないけど、モデルや俳優ではないので好感度は関係ない。個人の評価がプロダクトに影響するわけでもない。ユーザーのうち9割は、おそらく僕個人のことなど知らない。僕らはあくまでプロダクトの質で勝負していますから」

 巨額の資金調達で話題になったが、私生活では親と一緒に暮らす高校生だ。最近買えてうれしかったものは、「コンバースと(ディズニーのアニメ映画)トイ・ストーリーがコラボした限定スニーカー」。理由は「感性を研ぎ澄まされるデザインのものは、プロダクトに直結するから」という。もし今、10億円手に入ったら?

「全て事業に使うと思う。僕らの世代は、自分の好きなものにはお金をかけるけど、ほかは気にしない。僕の場合はそれがプロダクトなんです」

(文中敬称略)(編集部・作田裕史)

AERA 2018年5月21日号より抜粋