●その1 家の中&外に理解者


 今世紀の朝ドラで、最高平均視聴率を誇るのは15年の「あさが来た」(23.5%)。ディーン・フジオカが演じた五代と玉木宏が演じた夫。どちらもヒロインあさを愛しつつ、働くことに邁進させてくれる。五代は恋心を秘めたまま、夫も商才ある妻にぞっこんだから、ヒロインは自由に振る舞える。

 最高視聴率もむべなるかな。

●その2 対等&リスペクト
「ロス」という言葉の原点「あまちゃん」(13年)。そもそも海女という女性に支えられた北三陸が舞台で、そこに流れる空気は全編通じて女性に対等&リスペクト。女性を抜擢すると急に広告塔のように扱う組織とは全然違って、カラッと明るい。

「ひよっこ」(17年)の宗男おじさん(峯田和伸)は、イチ押しの「女子に効く人」。東京五輪から4年、ドラマの終盤、コメ農家の実家に花栽培を提案する。花は平和と楽しく生きることの象徴で、「これからは女の人が、自由に好きなものを買う時代」だから花なんだ、と。女性の価値観を肯定する、優しいセリフの数々に癒やされる。

●その3 堂々とせよ
 勝ち組負け組自己責任、効率よく結果を出せという時代にあって、朝ドラは「成功せよ」と言わない。「堂々とせよ」と言う。

「カーネーション」(11年)のヒロインは、コシノ3姉妹を育てた小篠綾子がモデル。洋裁の仕事を始めて間もなく、百貨店に洋装の制服を売り込む。相手にされないが、何度もデザイン画を持っていく。何度目かでこう気づく。「気に入られようとするからダメなんだ。自分が着たい服を作ろう」。そして、発注される。

 忖度も改竄もしない。自分がしたいことを堂々とする。それが成功への道。朝ドラはそう教えてくれる。事務次官への道ではないが、だからどうした。

 多分、まだしばらく、朝ドラの主人公は女子だ。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2018年5月14日号

著者プロフィールを見る
矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

矢部万紀子の記事一覧はこちら