家族のしがらみと、その背後にくすぶる愛やさまざまな心理を巧みに脚本家してきたファルハーディー監督、ペネロペとハビエル夫妻の息のあった演技が見どころだ。

 上映後に行われた記者会見では、「2人が共演する場合、家庭に仕事が影響しますか?」という質問が出た。ペネロペはこう答えた。

 「今回が初めてなわけではなく、夫とは何度も共演している。2人とも仕事と私生活は全く切り離して考えているの。私はとても若い頃から演技をしているけれど、20代の時は24時間役になり切るのがベターだと思っていた。今ではそんな風に感じていない。家に帰れば、すっかり役から抜け出て仕事の事は考えない。逆に私生活で学んだ経験を役に生かすこともある。信頼しあった家庭生活があるからこそ、共演も上手くいくと思うの」

 マドリッド在住のペネロペとハビエル。ファルハーディー監督は、彼らと仕事するために、キャスト、スタッフとも全員スペイン人という形で撮影を行ったという。

「5年ほど前にこの映画のプロジェクトが回り始めたの。最初の3年間は監督と時々連絡を取り合い、その間に脚本が出来上がった。2年前に監督のアスガルは、スペインに移り住んだ。先生について毎日スペイン語を学んだ。彼は私がこれまで仕事をした監督たちとは随分違っている。スペインの文化をスポンジのように吸収したの。撮影前日になると、寝ないで私達キャストの台詞を彼は全部暗記した。だから台詞を少しでも変えると、指摘されたほどよ。そういった彼の仕事への献身を、尊敬している。その成果がこの映画で観れると思う」

 こう熱く意気込みを語るペネロペ。

 ドイツ人女性記者から「最近、『#MeToo』ムーブメントが盛り上がる中、男女キャストの不平等なギャラが指摘されています。ズバリ、今回ご夫妻ギャラは同じでしたか?」という質問がでた。

 笑いが起こった後、会場はその答えに息をのんだ。

「勿論同じよ!質問はそれだけですか?」

 このペネロペの回答が真実か、否か。知る人ぞ知る、NOBODY KNOWS!

(取材・文/高野裕子 inカンヌ)