価値観が大きく変わることもある。01年から恋バナを収集している桃山商事の清田隆之さん(37)は、「恋愛相談が『恋愛』というカテゴリーに収まらなくなってきた」と語る。その傾向が特に顕著になったのは、東日本大震災のあった11年以降だ。

「00年以降に働きだした世代は、実感としてバブルを知らず、不況という認識もないままに生きてきました。忙しく働いても給与はそう上がらず、40歳、50歳と年を重ねて仕事を続けていけるか不安に思っている。3.11で価値観が根底から揺さぶられたことも大きいと思います。若いのに、『いつか孤独死するのでは』と恐れている人が多い」(清田さん)

 日本型雇用の恩恵から漏れた世代は、1人ではもはや人生の見通しも立っていない。

 時代は必ずしも理想通りには進まないが、時代を表す言葉は次々に生まれてきた。女性がひとりでも堂々と行動できる世の中を願って発信された「おひとりさま」、30代以上・未婚・子ナシを女性が自虐的かつユーモラスに表現した「負け犬」、産後夫婦仲が悪化する現象を再発見した「産後クライシス」。女性の家事育児労働を正当に評価しないことを指摘した「家事ハラスメント」は、妻が夫に過剰に家事のダメ出しをすることと誤解された。積極的に育児参加する男性「イクメン」、自分の時間を求めてさまよう「フラリーマン」……。

 一方、若い世代の価値観はフランクだ。現在、結婚1年前後の男女が見据えるものは、20年前と明らかに違う。

 メーカーのマーケティング職にある東大卒の女性(27)は、「女性管理職を応援する職場で、就職活動時から今まで、女性で不利だと思ったことはない」と語る。結婚して1年あまり、官公庁に勤める夫と共働きだ。「思った以上に忙しくて、家事を分担通りにできず、イラついたことはある」が、イライラは「お互いさま」。二人とも一人暮らし経験者。結婚してから、家事の負担は2分の1になった。

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