板門店の軍事境界線を挟んで、南北の首脳が握手。「本番」の米朝会談に向けて地ならしとなった(写真:韓国共同写真記者団)
板門店の軍事境界線を挟んで、南北の首脳が握手。「本番」の米朝会談に向けて地ならしとなった(写真:韓国共同写真記者団)

 朝鮮半島の将来像を描く首脳外交の急展開で脇役の安倍晋三首相。 主役として拉致問題を克服し、対話の輪に加われるのか。

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 4月27日、軍事境界線をまたぐ板門店で11年ぶり3度目の南北首脳会談が開かれた。南北米中が激突した朝鮮戦争から65年になる休戦が今も続き、今世紀には北朝鮮が核実験を重ねた朝鮮半島。その将来について、両首脳は共同宣言で「完全な非核化」を掲げ、「平和体制を築くため南北米または南北米中での会談を推進」と明記した。

 会談後、金正恩朝鮮労働党委員長と文在寅大統領は笑顔で抱き合った。米国では、5月末ごろの金氏との会談へ準備を進めるトランプ大統領を、FOXニュースや支持者らが「ノーベル平和賞だ」と持ち上げる。  ただ、全ては米朝首脳会談、その焦点となる北朝鮮の核の行方次第だ。北朝鮮は自衛手段と訴え米国に届くミサイルまで開発。米国は経済制裁を主導し、軍事行動も否定しないトランプ政権下で緊張は高まった。

 韓国が促した対話が2月の平昌五輪を経て劇的に動き今に至る。だが、まず核の放棄を迫る米国に対し、北朝鮮は過去の交渉のように体制保障や経済支援などを求め対応を小出しにするかもしれず、予断を許さない。

 そんな中、圧力を唱え続ける安倍氏は脇役、憎まれ役だ。

 南北首脳会談の翌28日にトランプ氏と電話をした後、記者団に「北東アジアの平和と安定に向けた歴史的な一歩だ」と述べつつ、「日米が主導する形で最大限の圧力をかけてきたから前向きな動きにつながってきた」と言うのを忘れなかった。

 さらにこの日の日本政府の発表は朝鮮戦争を想起させた。国連による北朝鮮への禁輸措置を徹底するため、日米に加え豪、カナダが沖縄の米軍嘉手納基地からの航空監視活動に参加。豪、カナダが在日米軍基地を使えるのは、朝鮮戦争時に国連軍が日本を拠点にした際の協定がまだ生きており、その国連軍に加わっていたためだ。

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